"消された十六番目の席" 第4話
の正と孤独な台所
に入ると、麻美はさらに骨なにた。 「お母さん、今のお正は親戚をみんなうちに呼びますからね。くらいになります」 ベランダで洗濯物を干していた私に、事承諾のように告げられた通告。 麻美の実の両親、妹夫婦、弟の。そして、輔が声をかけたという夫側の親戚――敏さん夫婦と夫さん。
「……? そんな数、誰が準備をするの?」 わず問い返した私に、麻美は呆れたように肩をすくめた。 「誰って、お母さん慣れてるでしょ? 昔は毎やってたんでしょ? 私は買いしの運転くらいなら付きってあげてもいいですけど」 結局、そこからの末は、私にとっての獄の労働となった。
物置の奥から分の客用器を引っ張りして洗い直し、ビールやジュースを何ケースも酒に注文した。りない座布団を枚買いし、押し入れの客用布団組をれたに枚ずつ干し、さらにりない組は貸し布団に配した。その費用も、すべて私の財布から消えていった。
そんな、に夫の妹である敏さんから本の話が入った。 『かず子さん、今はうちもお邪魔するわね! ちゃんから久しぶりに声がかかってねえ。兄さんのでお正を過ごすなんてぶりよ。
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かず子さんと積もる話をゆっくりしたいわ。の夕方は楽しみに待っててね。私からは言えないけど、きっと良いことがあるから!』 敏さんの弾んだ声に、私の胸は微かに温かくなった。
夫がきていた頃の正。 親戚同が集まると、夕方には夫が「正は寿司だ! 吉川にくぞ!」とを叩き、全員で駅の老舗寿司『吉川』へ繰りすのが恒例だった。 吉川の将は夫の来の親友で、いつも座敷の央、夫の真隣の特等席に私を座らせてくれた。 『かず子さん、今も、族を支えてくれてご苦労様だったな。まずはおの好物の穴子から握るぞ』 夫は嫌で酒を酌み交わし、私の皿に次々と極の握りを乗せてくれたものだ。 夫がくなってから、私は度もあのの座敷にがっていない。 (もしかして、輔はあの父親の伝統を復活させようとしてくれているのかしら……) そんな淡い期待を抱いた自分を、今となっては呪い殺したい。
、正午を過ぎると、親戚たちが次々と玄関へ押し寄せてきた。 歩を踏み入れるなり、麻美の父親である川久志さんが、輔の肩をバンバンと叩いた。 「いやあ輔君、派なだなあ! 駅で庭も広くて、した甲斐性だ!」 輔は「いやあ、古いですけどね」と照れ笑いを浮かべ、まるで自分がから建てたかのように振るっている。
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私は台所にち尽くし、湯の沸くやかんの音を聞きながら、ただ黙って急須にお茶の葉を注ぎ続けた。
敏さんが台所へやってきて、「かず子さん、座りなさいよ! 朝からちっぱなしじゃない」と私のを取ってくれた瞬、すかさず麻美が割って入ってきた。 「おば様、お母さんはこういうお世話が好きなんですよ! いてる方が落ち着くんですって。さあさあ、お客様は座敷へどうぞ!」 麻美の言葉に、麻美の母親である千恵里さんが「あらあ、働き者のお母様ねえ」と無邪気に笑った。 私が否定の言葉をにしようとした瞬、麻美はややかな目で私を瞥し、素くお盆を奪い取っていった。
午半。洗いののような湯呑みを洗い終え、えたをおしぼりで温めていた私のに、リビングから輔の威勢のいい声が響いてきた。 「よし! そろそろだ、駅にくぞ!」 子供たちの歓声が湧きがる。 エプロンをし、何かに夫が買ってくれた切な紺のコートにを伸ばした私に、あの破滅の宣告がされたのだ。
『母さんの席ないから留守番で』 『今は内だけで楽しみたいので』
が放ったその言葉の真を、私はまだ、完全には理解していなかった。