"玄関のピンクのウサギ" 第13話
誰が族だったのか
信之が「同居ではない」と言い張った、私はしも腹がたなかった。むしろ、ここまで来てもまだ言葉の形だけを変えれば事実まで変えられるとっていることが、れにじられた。松本弁護士が私のに置いたノートには、マンションのたちが覚えている範囲でいてくれた来事が並んでいた。綾乃が朝にゴミをしていた。夜遅くで帰ってきた。宅配便を綾乃が「森本です」と受け取ったこと。半ほどに引っ越し業者が階から荷物を運び、私たちの部へ入れたこと。
さらに管理会社にも記録が残っていた。正式な居者変更ではなかったものの、綾乃が駐の利用や荷物搬入について何度か問いわせている。信之自も「族同然のが入りする」と説していた。ひとつひとつはさな事実でも、並べると活の輪郭がはっきり浮かぶ。
「これでも、ただ事を作ってもらっていただけですか」
松本弁護士が静かに尋ねると、信之は線を落とした。
「泊まることはあった」
「どのくらい?」
「頻繁ではない」
私はそこで初めてをいた。
「階の部を解約した、さんはどこにんでいたの?」
信之は答えなかった。
「く毎おを渡して、活用品を買って、の半分を渡そうとして、んだのまいまで考えて、それでも同居じゃないって言うのね」
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「美、俺は……」
「もう説しなくていいわ。説は資料がしてくれるから」
以の私なら、夫から「違う」と言われると、自分の受け取り方が厳しすぎるのかもしれないと考えた。だが今は、誰かの言い訳より記録を見ることができる。これは私にとってきな変化だった。
話しいのあと、健とで昼を取った。息子はこの数、父親とほとんどを利いていないらしい。
「母さん、俺、子どもの頃ずっと父さんみたいになりたいとってたんだ」
「そうだったの?」
「無だけど、余計なことしないだとってた。母さんが忙しくしてても文句言わないし、酒も賭け事もやらないし。だから真面目なんだって」
私は苦笑した。
「私もそうってたわ」
「でも、真面目に見えることと、を事にすることは別なんだな」
その言葉に胸を突かれた。信之は派な遊びをするではなかった。料を使い込むことも、鳴って暴れることもない。だから私はい、自分は穏やかな結婚をしているのだとっていた。けれど穏やかさので、私がで背負ってきたものはかった。事、子育て、介護、計の、夫の失業の穴埋め。きな暴力がなかったから、さな公平を見ないことにしてきただけかもしれない。
午、へ戻ると、信之が客で荷物をまとめていた。
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「部、見つけたの?」
「町の古いアパート」
「いつるの?」
「連休が終わったら」
私は頷いた。胸が痛まないわけではなかった。緒にいたが、さなアパートへ移る。その現実に寂しさはある。でも、その寂しさを理由に元へ戻れば、私はまた自分を回しにする。
信之が段ボールに昔のアルバムを入れようとしていたので、私は止めた。
「それは置いていって」
「俺の写真も入ってる」
「だからコピーして分けましょう。健の子どもの頃の写真は、とも持っていていい」
夫婦を終わらせても、過まで奪いう必はない。そう言うと、信之は驚いたように私を見た。
「お、俺のこと憎くないのか」
私はし考えた。
「憎み続けるほど暇じゃないわ」
本だった。これから続きも活もて直さなければならない。みに使うがもったいない。
数、信之は町のアパートへ移った。玄関に残ったのは、彼が履いていた古い黒のスリッパだけだった。
私はそれを捨て、いしまっていた自分用の布のスリッパをした。
赤でもなく、ピンクでもない。
自分で選んだ、い青だった。