"玄関のピンクのウサギ" 第10話
祝の卓
、健と妻の裕子、そして歳になった孫が帰ってきた。私はホテルからへ戻り、玄関でを迎えた。暗証番号は元に戻され、ピンクのウサギのスリッパも消えていた。だが、以と同じには見えなかった。何かが度壊れた所は、具を元に戻しただけでは同じにならない。
孫は何もらず、「おばあちゃん!」とびついてきた。私は抱きしめ、台所へ連れていった。信之は朝から煮物や魚を用していた。普段ほとんど料理をしない夫が、族らしい卓を必に作ろうとしているのが分かった。
事が始まって分ほどは、誰も核に触れなかった。孫の保育園の話、裕子の仕事、健の張。信之は何度も笑おうとしたが、そのたびに健の表が固くなる。
やがて孫が裕子と緒に別へった、健が箸を置いた。
「父さん。〇万円のこと、説して」
信之のが止まった。
「今はせっかくの休みだ。そういう話はあとで――」
「俺は、のが万りなくて相談した。借りるだけでいいって言った。それでも父さんは老資だから触るなって言ったよな」
「健、それは――」
「なのに、っての息子には〇万した。どうして?」
信之は答えなかった。
健は続けた。
「俺が聞きたいのは額じゃない。父さんにとって、俺たちは何だったんだってことだよ。
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母さんは、俺たちのために川町にいてくれた。その、父さんは母さんがいないのをいいことに、別のをに入れて、を渡して、まで渡そうとしてたんだろ」
「そこまで言うな」
「じゃあ、どこまでなら言っていい?」
健の声は震えていた。鳴ってはいない。でも子どもの頃から父を尊敬してきたの失望が、言葉のつつに滲んでいた。
私は腕の翡翠をし、テーブルに置いた。
「これも、さんに渡したの」
健は目を見いた。
「ばあちゃんの?」
「ええ。万円で売られてたから、買い戻した」
「父さん……」
信之はとうとう目を伏せた。
「俺は、そんなにい物だとはらなかった」
健が子からちがった。
「値段じゃないだろ!」
その声で孫が廊から顔をした。裕子がすぐ抱きげ、「丈夫だよ」と別へ連れていった。私は健の袖を引き、座らせた。
「子どものではやめましょう」
健は唇を噛み、く息を吐いた。
信之はようやくさな声で言った。
「全部、俺が悪かった。さんとは終わった。の贈与も取りげた。〇万円も返してもらう。だから、族まで壊さないでくれ」
私はその言葉に、はっきり違を覚えた。
「族を壊すのは婚する私だとってる?」
「そういうじゃない」
「じゃあ何? あなたがしたことは、族を壊したことにならないの?」
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信之はまた黙った。
健がい声で言った。
「父さん、母さんが婚するなら俺は止めない」
「健」
「母さんがになるのが配なら、俺たちが支える。でも母さんがこのにでみたいなら、それも尊する。母さんのだから」
その言を聞いた瞬、胸がくなった。私は息子のために何も働き、孫のためにを使った。でも今、息子は私を“誰かの妻”ではなく、のとして見てくれている。
「ありがとう。でもつだけ約束して。婚したあとも、あなたたちは自分たちの活を優先すること。私は歳。もあるし、働こうとえば働ける。誰かの世話になるために婚するんじゃない」
健はゆっくり頷いた。
卓の向こうで、信之だけが取り残されたような顔をしていた。
その夜、族が寝たあと、私は松本弁護士から届いたメッセージをいた。
《ご主から、贈与に関する相談取りげの連絡を確認しました。ただし、別件でしい資料があります。お話ししたいです》
別件。
私はもう、驚かないつもりだった。
けれど翌見せられたのは、信之が綾乃のために作っていた「の話」より、さらに具体な将来設計だった。