"玄関のピンクのウサギ" 第9話
息子がった
綾乃と会った翌、健から話がかかってきた。声がいつもと違った。く、抑えているのにりがにじんでいる。
「母さん。父さんと何があった?」
私は瞬黙った。誰かから聞いたのかとったが、健は続けた。
「父さんから話が来た。母さんが帰るなり婚すると騒いで、弁護士まで連れてきたって。所の女のに事を作ってもらってただけなのに、母さんが誤解してるって言ってた」
私は目を閉じた。最まで同じだった。信之は、私が何もらずにっている妻という形にしておきたいのだ。
「健。今から言うことを、途でを挟まず聞ける?」
「うん」
私は事実だけを話した。暗証番号が変わっていたこと。綾乃がくにみ、階の部まで解約していたこと。かの送。買い物の記録。〇万円が雄のの業資に使われたこと。母の翡翠の腕輪が売られていたこと。そして、の持分半分を綾乃へ贈与しようとしていたこと。
話の向こうから何も聞こえなくなった。
「健?」
「……〇万って、本当?」
「記録があるわ」
「俺が買う、万貸してくれって頼んだよな」
「覚えてる」
「父さん、老資だから絶対触らないって言ったよな」
「ええ」
い沈黙のあと、健がく言った。
「母さん。俺、今から帰る」
「予定通りでいい。
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仕事を放りして帰ってきたら、私がるわよ」
「でも」
「これは私とあのの問題。あなたがる必はあった。でも、解決するのは私」
私は自分でも驚くほど落ち着いていた。健は何度か呼吸し、最に「分かった。でも、ちゃんと話させて」と言って話を切った。
その夜、信之がホテルへ来た。フロントから連絡があり、私はロビーでだけ会うことにした。夫はやつれ、髭も伸びていた。以ならその姿を見て配したとう。けれど今は、同と夫婦を続けることは別だと分かっていた。
「健に話したのか」
「あなたが先に話したんでしょう。私が帰るなり騒いだって」
「親子のを壊すなよ」
「壊したのは誰?」
夫は唇を噛んだ。
「さんとはもう会わない。の話も取り消す。〇万も返してもらう。だから婚だけは考え直してくれ」
「どうして?」
「だぞ」
私はその言葉を聞いて、逆に気持ちが固まった。
「だったからよ。なら、まだ違いだったとえるかもしれない。でもあなたは、私がかけて作った活をで別のに渡そうとした」
「寂しかったんだ」
「寂しかったら暗証番号を変えるの? 寂しかったら母の形見を渡すの? 寂しかったら共同座から〇万円をすの?」
「俺が悪かった」
「それは答えじゃない」
信之は俯いた。
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私は初めて、彼がさく見えた。背が縮んだのではない。私ので「の黒柱」だった像が消えただけだった。
「母さんの腕輪は、買い戻したわ」
「そうか」
「万円払って」
信之が顔をげた。
「そんなにしたのか」
私は笑った。
「あなた、その値段すららずにに渡したのね」
夫は何も言えなかった。
「信之。あなたにとっては宝だったかもしれない。でも私には母のだった。値段の問題じゃない。私が切にしてきたものを、あなたが勝に『もう使わないもの』にしたことが番許せないの」
私は席をった。
「、健たちが来る。そのにつだけしておいて。の持分贈与に関する相談を正式に取りげて。松本先にも確認してもらうから」
「分かった」
「それと、私の物にもう触らないで」
ロビーをる、信之が背に言った。
「美。お、本当に俺を捨てるのか」
私は振り返らなかった。
、私はこのについていくと決めた。
今度は初めて、自分のためにれると決めたのだ。