"玄関のピンクのウサギ" 第6話
みんなっていた
の半分を綾乃へ渡す相談が、以から始まっていた。その事実をった夜、私は初めて泣いた。ただし、夫に裏切られたしみではなかった。、毎晩画面越しに夫の顔を見て、「今も変わりない」としていた自分がけなかった。信之はそのすでに、私がいない暮らしを“仮の活”ではなく、しいとして組みて始めていたのだ。
翌朝、私は泣いた跡をたいタオルで隠し、マンションへ向かった。松本弁護士から「のの私物や財産の現状を記録しておいた方がいい」と助言されたからだ。玄関の暗証番号はまだ戻されていなかった。インターホンを鳴らすと、信之が無言でけた。
部のは回より片付いていた。ピンクのスリッパは消え、柄の毛布も化粧品も見えない。いかにも「何もなかった」に戻そうとした跡がある。私はスマートフォンで各部を撮した。信之は嫌そうに私のろをついてきた。
「そこまでしなくてもいいだろう」
「何がなくなってるか、私にはもう分からないもの」
「さんとは別れた」
「それ、何回目?」
信之は黙った。私は寝のクローゼットをけた。私のは端に押し込まれ、その隣には空になったハンガーが本以並んでいた。綾乃が持ちったのだろう。洗面台の収納にも女性用のヘアカラーやの箱が残っている。
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の活を晩で消せるはずがない。
撮を終えて廊へると、ちょうど隣の奥さんと鉢わせた。気まずそうに目をそらされたので、私は自分から声をかけた。
「ご無汰しています」
「田島さん……お帰りだったのね」
「はい。しく戻りました」
相は迷った末、「変だったわね」とさく言った。そのぶりで分かった。やはり周囲は事をっていた。
「さんがここにんでいたこと、ごじでした?」
い沈黙のあと、奥さんは頷いた。
「のくらいからは、みんなってたとう。朝も夜も見かけたから」
「私は川町へ移って、このには戻らないって聞いてました?」
「ええ……信之さんがそう言ってた。奥さんは息子さんので暮らすことになったって」
私はわず笑った。私は度もそんな話をしたことがない。で戻ると何度も夫に伝えていた。それなのに信之は、所にまで私の“退”を説していたのだ。
午、佐藤さんから別の話を聞いた。綾乃は半に階の賃貸を完全に解約していた。気もガスも止め、郵便物の転送まで済ませたという。つまり、夫が言う「事を伝ってもらっていた所の」ではなく、活の拠点を完全に私のへ移していた。
「美さん、さんね、町内会のに『信之さんがこのの半分を私に残してくれる』って話してたこともあるの」
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「そこまで?」
「私は冗談かとった。でも……」
「冗談じゃなかったわ」
私はバッグから贈与相談の写しをすことはしなかった。ただ、佐藤さんの言葉でつ確信した。綾乃もの話をっていた。信之がで勝にを見ていたわけではない。
夕方、健から再び話が来た。あとで帰省するという。
「母さん、父さんにちゃんと連絡した? どうせまた町内会か何かで忘れてるだろ」
「しておくわ」
「本当に声変だぞ。何かあった?」
「し疲れてるだけ」
私はまだ言えなかった。息子にとって信之は、無では悪いが、まじめな父親だった。その像を壊すのは私ではなく、信之自であるべきだとった。
話を切ったあと、私はもう度、物置のを確認した。母の腕輪とイヤリング以にも、古い封筒や箱がかされている。父から母へ送られた、祖母の帯留め、私の若い頃の記貨。幸い価なものはほとんど残っていたが、誰かが触った形跡だけはあった。
その、棚の奥から枚のレシートが落ちた。所の買取の名が印字されている。付は昨。品目欄には「製品 点」とあった。
私はそので写真を撮り、松本弁護士に送った。
母の腕輪だけではなかった。
信之と綾乃は、私がいないを自分たちの暮らしに変えながら、私の過までしずつ換していたのかもしれない。