"玄関のピンクのウサギ" 第4話
母の形見
松本弁護士に相談してから目、私は同じマンションにむ古い、佐藤さんに会った。私が戻ったことをり、配して連絡をくれたのだ。喫茶で向かいうなり、佐藤さんは何度も「ごめんなさい」とをげた。
「美さんに言おうとったこと、何度もあったの。でも川町で孫の世話に追われてるって聞いてたし、余計なことを言って庭を壊したらって……」
私は責めなかった。むしろ、これまで誰も私に教えなかった理由をりたかった。佐藤さんによれば、綾乃は最初の半ほど「事を作りに来ている所の」というだったらしい。だが徐々に滞がくなり、いつのにか夜も帰らなくなった。半には、もともと借りていた階の部を解約し、荷物をすべて私のへ運び込んだという。
「それにね、さん、自分で言ってたの。『奥さんは向こうで孫と暮らしてるようなものだから、こっちは私が支える』って」
「私たちが婚するとも?」
佐藤さんは苦い顔で頷いた。
「信之さんが約束してくれたって。婚したらむ所も何とかしてくれる、活の続きも伝ってくれるって」
私はコーヒーをみ、ゆっくりカップを置いた。夫は私に婚の話を度もしていない。それどころか毎晩のビデオ通話で、「こっちは変わらない」
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「く戻ってこい」と言っていた。その裏で別の女には、私との婚の活を語っていたのだ。
帰宅する、佐藤さんが急にいしたように言った。
「そういえば、美さんのお母さんのブレスレット。翡翠の、濃い緑の」
胸がざわついた。
「どうしてそれを?」
「、さんがつけてたの。似てるだけかもしれないけど、に美さんのお母さんがいつもつけてたのを見たことがあったから」
私はそのでへ向かった。信之はしていた。寝の奥にある物置をけ、母の遺品を入れていた桜の箱を探した。箱はあった。けれど蓋をけた瞬、血の気が引いた。
翡翠の腕輪がない。古いのイヤリングもない。母がくなる直までにつけていたもので、私にとっては宝というより母のそのものだった。母は病院のベッドで腕輪をし、「これ、いつかあなたが持ってなさい」と私のに押し込んだ。私は価だからではなく、怖くて普段使いできず、の奥にしまっていた。
夕方、信之が戻るのを待った。私は箱をテーブルに置いた。
「母の腕輪はどこ?」
「何のことだ」
「らないって言わせない。ここに入れてあること、をるにあなたにも話したわ。母の遺品だから絶対にかさないでって」
信之の顔が固まった。
「さんが……しつけてみたいって言ったんだ」
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「し?」
「気に入ってたから、貸しただけだ」
「く返さずに?」
信之はを閉ざした。私は鳴りたかった。、夫が自分の財布から何を買おうと、私は声をしたことはない。でも母の遺品だけは違った。あれは夫婦の共物ですらない。私に渡された、母から娘への最の贈り物だった。
「返してもらって」
「さんは引っ越した。今すぐは――」
「所は?」
「らない」
「も緒に暮らしたの所をらないの?」
信之はを向いた。その反応で、私はまたつ確信した。彼はまだ綾乃を守っている。
その夜、松本弁護士に連絡し、腕輪とイヤリングの件を伝えた。母の、弟が遺品理のために撮した写真が残っていること、祖母が腕輪を買った古い領収も実に保管してあることを話すと、松本弁護士は「写真と領収をすぐ確保してください」と言った。
翌朝、弟から写真が届いた。画面いっぱいに拡された腕輪には、いのようない筋が本っている。違いない。私の母のものだ。
そのの夕方、松本弁護士から話が来た。
「田島先、腕輪についてがかりがました」
「見つかったんですか?」
「綾乃さん名義のフリマアプリの過品に、非常によく似た翡翠の腕輪があります」
「今、どこに?」
瞬の沈黙のあと、彼は言った。
「すでに売却されています。
価格は万円です」