"玄関のピンクのウサギ" 第3話
の値段
〇万円という数字を見た瞬、私はりより先に息が止まった。その額には見覚えがあった。夫婦で「老に何かあったのため」と積みててきた共同座から、昨に度だけきながあった。私は当、川町で孫が肺炎になり、入院や付き添いでがいっぱいだった。信之からは「定期を組み替えた」とだけ聞かされ、それ以確かめなかった。
振込先の名は雄。綾乃の息子だった。私はの記録を保し、共同座の残推移を印刷できるよう配した。も緒に暮らしていると、相を疑うこと自体が面倒になる。信之は細かいおにうるさく、を回減らすだけで得をしたように笑う男だった。だから私は、まさか百万円単位のを黙ってかすとはわなかった。
ホテルの窓際に座ると、昔のことが次々によみがえった。歳で結婚した、信之は数こそなかったが、真面目だけが取り柄のだとっていた。男の健を産んだ、私は産の血でひどくっていたのに、病へ駆け込んできた信之は真っ先に赤ん坊を抱きげた。私はし寂しかったが、父親になったびなのだと自分に言い聞かせた。
〇代の終わり、信之が勤務先の理で職を失ったは、半くに閉じこもった。
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私は昼は学、夜はのを伝い、休には清掃の仕事までした。息子の学費を止めたくなかったからだ。信之が再就職した、私は「族だから支えうのは当然」と笑った。それが夫婦だとっていた。
ところが数、健が川町でを買うに万円だけりず、父親に借りたいと頼んだことがあった。信之は「老資にをつけるな」と即座に断った。私は自分の貯から万円をし、残りは健がから借りた。あのの信之の理屈を、私は正しいとっていた。老資は夫婦の最の備えなのだから、と。
その同じ男が、別の女の息子には〇万円を渡していた。
夕方、健から話が来た。
「母さん、父さん驚いてた?」
私は瞬言葉を失ったが、「ええ、驚いてたわ」とだけ答えた。健はに妻と孫を連れて戻る予定だった。今ここで全部話せば、仕事を投げしてでも帰ってくるだろう。それはしたくなかった。
「今はみんなで連休を過ごそうな。父さんに、俺たちに着くって言っといて」
「分かった。あなたは仕事を終わらせてから来なさい」
声が震えそうになったので、邪をひいたふりをして話を切った。自分でも驚くほど涙はなかった。泣くにはまだ、らないことがすぎた。
翌朝、私は松本弁護士の事務所へ向かった。
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代半の穏やかな男性で、私が持参した細と権利を枚ずつ確認しながら、途で何度も質問をした。夫の額、私の、宅ローンの負担、共同座への入割、綾乃の居実態。私はではなく、分かることだけを答えた。
「現点で、婚を決めていますか」
「はい」
「迷いは?」
私はし考えた。
「昨まではありました。でも今朝、〇万円の送を見つけて消えました」
松本弁護士は頷き、まず財産の流れを洗う必があると言った。夫婦の共同活のためではないきな支が第者へ流れているなら、事によっては財産分与ので問題にできる。についても、名義だけで決まるわけではなく、取得や返済への寄与を示す資料がになると説してくれた。
私は事務所をるに、つだけ頼んだ。
「全部調べてください。私は何を失ったのか、数字でりたいんです」
というは数字にできない。でも、なくとも夫が私に隠してかしたおなら追える。
その夜、信之から何度も話が来た。私は回目でた。
「美、どこのホテルにいる。迎えにく」
「必ないわ」
「さんはていった。もう終わったんだ」
「終わってない。あなたが終わらせたくても、私はこれから始めるの」
「何をする気だ」
「分の答えわせよ」
話の向こうで、夫が息を呑んだ。
私はまだらなかった。その答えわせのには、送よりも価で、私にとって額では測れないものまで含まれていた。