"濁流の中のSOS" 第11話
夫の嘘が崩れた
夫が柄を拘束されたと聞いても、私は歓声をげるような気持ちにはならなかった。堵はあった。なくとも、突然部のへ現れるのではないか、凛の学へ押しかけるのではないかという恐怖はし減った。けれど同に、緒に暮らしたが、本当に私たちの命を奪おうとした能性が、公な続きので現実になっていくさもあった。
夫は当初の説を簡単には変えなかった。
私と凛がを滑らせた。自分は助けようとした。携帯話を落とした。流を探し回った。へ戻ったのは混乱していたからだ。
ところが、そのつつが記録によって崩れていった。
防犯カメラには、夫のがほぼ寄りせず自宅方面へ戻る姿が映っていた。携帯話の位置報はと緒に移していた。通話履歴には、警察や消防へ連絡しようとした痕跡がない。現では、柵のに私と凛の跡があり、そのろ側に夫の靴と致する跡が確認された。ぬかるんだ面には、私たちが自分から柵へり込んだような痕跡はなく、夫が説する状況とはわなかった。
そして凛の端末に残っていた音声。
「今で全部終わる」
その言だけで事件が決まったわけではない。けれど、夫が作った「突然起きた事故」という話のでは、あまりにも自然だった。
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さらに、私へ財産管理を委ねさせるための文データが、自宅のパソコンから見つかった。作成は事件のかなりで、何度も修正されていた。私名義の資産をどう扱うかという文章だけがしずつき換えられ、夫にとって都のいい内容へづいていた。
夫はそこで初めて説を変えた。
殺すつもりはなかった。ただ脅かそうとしただけだ。妻が騒いで体のバランスを崩した。娘まで落ちるとはわなかった。
私はその話を弁護士から聞き、しばらく何も言えなかった。
最初は「触れていない」と言っていたが、証拠がると「脅かしただけ」に変わる。事故だったという説を守れなくなったから、今度は故の程度をさく見せようとしている。
「もう、本の言葉に付きわなくていいですよ」
弁護士が言った。
その言に救われた。
私はずっと、夫の言葉に反応してきていた。鳴られれば謝り、無されれば嫌を直そうとし、責められれば自分のどこが悪かったのかを探した。事件のあとでさえ、夫がどんな言い訳をしているのかを聞くたびに、胸の奥がざわついていた。
けれど夫が何と言おうと、川へ落ちた事実は変わらない。私たちを助けずにったことも、を探していたことも、娘がかから父親を恐れていたことも変わらない。
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私はそこでようやく、夫の説を理解することと、真実をることは別なのだと気づいた。
凛には、捜査の細かな内容を必以に伝えなかった。専からも、娘を事件の役にしない方がいいと言われていた。だから私は、「のところでめてるから、凛は学のことを考えていいよ」とだけ話した。
最初の頃、凛はそれでも何度も尋ねた。
「私、何か話した方がいい?」
「端末のこと、もっと説する?」
「お母さん、丈夫?」
そのたびに私は首を振った。
「もう分だよ。あとはの仕事だから」
その言葉を何度も繰り返すうちに、凛の表はしずつ変わった。
学へだけ戻った、凛は帰宅すると「友達がノート見せてくれた」と笑った。久しぶりに、父親でも事件でもない話をした。体育の授業はまだ見学だけれど、担任が無理をしなくていいと言ってくれたこと。で苦な魚がたこと。友達が髪型を変えたこと。
私はそれらをつ残らず聞いた。
以なら、卓で夫の嫌を確かめながら半分しか聞けなかったような話だった。
やがて、夫に対する刑事続きが次の段階へむことになった。捜査で集められた記録は、夫が偶然起きた難事故へ巻き込まれた族を助けられなかったという説とは致しないと判断された。
私と凛は、もう同じへ戻らないことを正式に決めた。
弁護士を通じて必な続きをめ、まいもしく探した。
その、夫側から度だけ、私へ直接謝罪したいという申しがあった。
私は断った。
以の私なら、も夫婦だったのだから度くらい話を聞くべきではないかと迷ったかもしれない。
でも今は分かる。
会って何を言われても、あのの川は消えない。
だから私は、返事をだけ弁護士へ伝えた。
「娘の全を最優先にします。直接会うつもりはありません」
それが、夫に対して私が初めて迷わず引いた境界線だった。