"濁流の中のSOS" 第10話
夫が計算していたもの
警察から示された資料ので、私が最もく目をせなかったのは、借の総額そのものではなかった。もちろん、その数字も分にきかった。消費者融、カードローン、証券会社の追加保証、からの借入れ。夫が私に「し投資をしているだけ」と説していた裏側で、複数の穴が同に広がっていた。
けれど担当刑事が次に見せたものは、もっとたかった。
「ご主の自宅のパソコンから、検索履歴が確認されています」
画面には、事件の数週から繰り返し調べられていた言葉が並んでいた。配偶者がくなったの相続、子どもがいるといないの取り分、命保険の受取、事故で族を失ったに必になる続き。どれも、それだけなら何かのきっかけで調べることはあるのかもしれない。けれど夫が私の財産を自分へ移すための類を作り、私と凛をのない増した川へ連れてった事実となると、偶然だとはえなかった。
私はわず子の背へ体を預けた。のに、あのの夫の背が浮かんだ。壊れてくなった柵へ迷わず歩いていった姿。帰ろうとした私たちを止めるように振り返った顔。そして、背に受けたい衝撃。
「もうつあります」
刑事は別の記録を示した。
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夫は私たちが川へ落ちたあと、流を探してり回っていたと説していた。ところが沿いの複数の防犯カメラには、夫のが川沿いをるのではなく、そのままへ戻っていく様子が残っていた。途でを止めた形跡も、救急や警察へ助けを求めた形跡もない。さらに、落としたと主張していた携帯話は事件もとほぼ同じ経を移しており、通信記録も残っていた。
「携帯を落としたという説とはいません」
刑事は淡々と言った。
私は目を閉じた。あれほど巧妙に見えた夫の嘘が、記録のではしずつ形を失っていた。庭のでは、言い切った者が勝ちだった。夫が「おの勘違いだ」と言えば、私は自分の記憶を疑った。けれど防犯カメラも位置報も、夫の嫌を恐れて言葉を変えたりはしない。
さらに決定だったのは、自宅へ戻ってからのだった。
夫はその夜、私たちの否を確認するよりに、自宅のパソコンから私が利用しているインターネットのページへ何度もアクセスしていた。ログインには成功していなかったが、私が普段使っていた融関を複数き、机の引きしや類棚を探した形跡も確認されたという。
私はそこまで聞いたところで、吐き気を覚えた。
川へ落ちた私たちがきているかどうかも分からないに、夫は私のを探していた。
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「娘まで緒に落としたのは……」
自分でも聞きたくない質問だった。それでもにした。
刑事はすぐに断定しなかった。ただ、夫の検索履歴のに、子どもがいるの相続割に関するものが含まれていたと教えてくれた。
それだけで分だった。
私は元を押さえた。凛は夫にとって、自分の娘であるに、自分のい通りにならない計画ののへ変わっていたのかもしれない。その能性を考えるだけで体が震えた。
「奥さん」
隣にいた弁護士が静かに声をかけた。
「今ここで全部を理解しようとしなくていいです。事実は捜査関が積みげています。あなたが背負う必はありません」
その言葉で、私はようやく息を吐いた。
私は、夫の嫌も、庭の空気も、娘の将来も、自分で何とかしなければならないとっていた。けれどもう違う。夫が作った借も、夫がついた嘘も、夫が選んだも、私の責任ではない。
そのの夕方、滞先へ戻ると、凛はダイニングテーブルで数学の宿題をしていた。消しゴムのかすを指で集めながら、何でもない顔で「おかえり」と言った。
私は瞬、泣きそうになった。
川から助かった以来、私が欲しかったのはきな勝利ではなかったのだとう。
娘が普通に宿題をして、私が普通にへ帰り、「おかえり」
と言ってもらえる活。
それを奪おうとしたから、もう度と私たちのを渡さない。
私は凛のに座り、「ただいま」と答えた。
その数、警察から夫が正式に柄を拘束されたという連絡が入った。容疑は、もはや単なる事故の適切な対応ではなかった。
の命を狙った計画な為として、捜査はきくき始めていた。