"機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体" 第9話
無精子症のカルテと豚殺し詐欺
の眉が、そうにねがった。
「何を負け惜しみを言ってるのよ! 託と毎晩のようにしってできた、正真正銘の託の子供よ! DNA鑑定でも何でも受けてやるわ!」
「そう。なら、これを説してもらいましょうか」
玉が元のレザートートから取りしたのは、都内屈指の学病院の公印が押された、厳封された通の診断だった。
「託。、結婚してが経っても子供が授からなかった、あなたがで密かに都内の学病院を受診したのを覚えているわね」
託の顔から、再び血の気が引いた。
「な……なぜ、母さんがそれを……」
「あなたが寄舟に『体質に妊娠しにくい体なんだろう』と嘘を吐き、責任をすべて彼女に押し付けていたあの。主治医から私の元へ、直接カルテの控えが届いていたのよ」
玉は診断をき、ロビー全体に聞こえる声で朗読した。
『診断結果:特発性無精子症。精液に精子のは切認められず、自然妊娠、ならびに通常の授精による受胎は医学に百パーセント能と診断する』
「む……無精子症……!?」
託の叫びが、喉の奥で引き攣った。
「う、嘘だ……! 俺に問題があるなんて……俺は健康そのもので……!」
「寄舟はね、あなたの男としてのちっぽけなプライドを守るために、自分が悪者になって『私が子供を産めない体質なんです』と、親族からのたい線をに浴びて耐えてくれたのよ!」
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玉の激しい叱責がんだ。
「それなのに、あなたは妻のその自己犠牲に甘え、己の欠陥を棚にげて妻を役たずと見し、で女を作った! ……さあ、さん。精子がも作れない男の種で、あなたはどうやって妊娠したのかしら?」
の全から、文字通り血の気が引き、気へと変した。唇をガタガタと震わせ、歩、また歩と退りする。
「そ、そんなの……でっちげよ! 偽の診断よ! 託、信じちゃダメ! 私のお腹の子はあなたの赤ちゃんなのよ!」
「おい、……お、俺を騙していたのか……? この子は……誰の子なんだ……!?」
託の血った目がを捉えたその瞬、林健が混みをかき分けてへと脱兎のごとく逃げそうとした。
「逃がすな!」
玉の図とともに、控えていたSP名が素く回り込み、林健をへねじ伏せた。
ドスン!
「ぐわっ! せ! 俺は関係ない!」
「関係ないはずがないでしょう、林健さん」
寄舟が徹な取りで林健のに歩み寄り、バッグから枚の戸籍謄本を放り投げた。
「あなたたち、兄妹なんかじゃないわね。に倉で正式に婚姻届を提した、正真正銘の『夫婦』じゃない」
ロビーが再び凍りついた。
「ふ……夫婦……!?」託が目を剥いた。「兄妹じゃなかったのか……!?」
「調査報告を読ませてもらったわ」玉がややかに続けた。
「、額のと賭博の借で首が回らなくなった林健との夫婦は、派好きで騙しやすいメトロ航空の放蕩社・託に目をつけた。
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がとして取り入り、得たを夫の林健へ流して借を返済。さらには夫を運営部として会社へ潜り込ませ、会社の資材購入費を増しして数億円を着していた……。いわゆる『豚殺し詐欺(ロマンス詐欺)』よ。託を太らせるだけ太らせて、最は妊娠を偽装しての財産を丸ごと乗っ取る計画だったのね」
「ひっ……! 違う、違うの託! 騙すつもりなんてなかったの! あなたをしていたのは本当よ!」
がにいつくばり、託の元へすがりついた。
しかし、託の目には、もはや激の狂気しか残っていなかった。
「貴様ら……ッ!! 俺を……俺のを、種馬の代わりに仕てて嘲笑っていたのかッ!!」
託の拳が、の肩を激しく突きばした。は派にへ転がり、抱えていたバッグから偽の母子帳と、のエコー写真のコピーが散乱した。
その、到着ロビーにサイレンの音が鳴り響き、所轄署の捜査員数名が崩れ込んできた。
「警察だ! 林健、および! 詐欺、業務横領、ならびに恐未遂の容疑で逮捕状がている!」
「嫌ぁぁぁっ! して! 私は氏グループの若奥様になるのよ! 託、助けてぇぇぇっ!!」
の首にたい錠が嵌められ、喚き叫ぶ声がパトカーのサイレンにかき消されていく。林健もまた、に顔を擦り付けられたまま連されていった。
悪のような茶番劇が、完全に幕を閉じた瞬だった。