"機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体" 第4話
引き裂かれた翡翠と隠された契約
の爪が、玉の首元にかかったプラチナチェーンを引に引きちぎった。
プチン、と属の千切れる鈍い音が響き、胸元から滑り落ちたペンダントが絨毯のに転がった。を象った、く澄んだ緑を湛える極の翡翠。にかざせば、内側から吸い込まれるような彩を放つ、世界につとしないの逸品だった。
はそれを拾いげ、目を丸くしてまじまじと見つめた。
「……あ? これ、どこかで見たことがあるわね。……いしたわ! あの寄舟のクソババアも、首から同じようなものをげていたわ!」
の目が、劣な歓に歪んだ。
「あんた……もしかして、あの寄舟の内か何かじゃないの!? 母親か叔母からないけど、だから必になってあの女の肩を持ってたわけね! なるほど、理で顔のシワの寄り方がそっくりなわけだわ!」
玉はので嘲笑した。
このペアネックレスは、かつて玉が寄舟を「の正式な継者の妻」として認めた証に、つ誂えてつを自らにつけ、もうつを寄舟に贈ったものだ。寄舟はそれを肌さず切にしていた。このは、玉と寄舟の区別すらつかず、ただ「託の妻の持ち物」として認識していたのだ。
「調べたのよ、私。国内につしかない限定品だってね。
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託にねだったのに、『あれは絶対に渡せない』ってケチくさいこと言ってたの。でも、に入ったわ。寄舟のブレスレットも、このペンダントも、全部私のものよ!」
はペンダントを指先で弄びながら、酷に笑った。
「寄舟なんてね、託に捨てられて当然なのよ。あいつ、託の役に何つってないじゃない。でしく飯作って洗濯してるだけの、ただの穀潰しよ。男に抱かれる魅力もない、カビのえた雑よ!」
「……寄舟が、託の役にっていないですって?」
玉が歩踏み込んだ。その声のさに、が瞬気圧されてずさる。
「当たりでしょ! 託はね、これから自分の力で世界な企業『Apex社』と数億ドル規模の巨独占契約を結ぶのよ! その契約にサインすれば、託は氏グループの板なんかなくたって、完全に独した財閥の頂点にてるの! あのうるさい母親の支配からも完全に自由になれるって、託が約束してくれたわ!」
「Apex社……?」
玉の眉がわずかにいた。
Apex社。興のエネルギー・産発コングロマリットであり、世界各国の巨資本が提携を望して列をなす、正真正銘の国籍メガバンクのパートナー企業。そのApex社が、なぜ赤字続きのメトロ航空ごときと数億ドルもの提携を結ぶのか。
「そうよ! Apex社のトップが託の才能をく評価して、直々に巨額のプロジェクトを回してくれたのよ! その契約が成したら、託は真っ先にあの寄舟を追いして、私を本物の夫にするの! お腹の跡取りと緒にね!」
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は勝ち誇ったようにペンダントを放り投げ、ヒールの踵で力任せに踏み躙った。
パキッ、と乾いた音がして、世界につとない極の翡翠が、無残にも真っつに砕け散った。
「ひっ……!?」
客乗務員たちが息を呑み、鳴を押し殺した。千万ドル以の美術価値を持つ至宝が、ので緑の末となってび散る。
「あーあ、壊れちゃった。まあいいわ、どうせ託にしいのを個でも買わせるから。寄舟のババアに伝えておきなさい! 『あんたの居所はもうどこにもない』ってね!」
その瞬、内アナウンスがたく響いた。
『当はもなく、メトロシティ国際空港へ着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めください』
玉は砕かれた翡翠の破片を瞥し、そしての顔を正面から見据えた。
その表には、もはやりすら浮かんでいなかった。ただ、害虫を確実に駆除することを決した、絶対な捕者の徹さだけが満ちていた。
「……ええ。着陸したら、すべてを清算しましょう。あなたと、私の愚かな息子との関係をね」