"濁流の中のSOS" 第7話
「お母さんがいるも怖かった」
その夜、凛とで静かに過ごしていただった。テーブルののお茶はめ、テレビもついていない。私は何度も娘へ話しかけようとして、そのたびにやめた。
事件のことを聞けば、凛はまた私をさせようとする。自分が怖かったはずなのに、「丈夫」と言ってしまう。川で私のを握ったと同じように、母親である私を守ろうとする。
だから私は待った。
「お母さん」
しばらくして、凛の方からをいた。
「なに?」
「私ね……お父さんとのが番怖いとってた」
「うん」
「でも違った」
凛は膝ので両を握った。
「お母さんがいるも、ずっと怖かった」
私は言葉を失った。
凛は泣きながら話した。で卓を囲んでいる、夫は私が気づかない所から私を睨んでいたという。私が何か見を言うと、夫の元が固くなる。私がそれに気づき、急いで別の話題をして笑う。凛はその連の変化を毎見ていた。
「私が何か言ったら、お父さんの嫌が悪くなって、お母さんがられるとってた」
私は、庭を守るために夫の嫌を取っていたつもりだった。
実際には、その姿を娘へ見せ続けていた。
「お母さん、ずっと息止めてるみたいだった」
凛は胸のあたりを押さえた。
「ご飯のも、テレビ見てるも。お父さんが次にるかもしれないから、私も何も言わない方がいいってってた」
広告
私はようやく理解した。
私が「娘のため」と呼んでいたは、娘にを与えていなかった。むしろ、いつ爆発するか分からない父親と、その爆発を防ごうとして怯える母親のへ、娘を閉じ込めていた。
「ごめんね」
それしか言えなかった。
「こんなこと言ってごめんなさい」
凛が先に謝った。
その瞬、私は声をげて泣いた。
謝らなければならないのは私の方だった。私は凛を守っているとい込み、娘が苦しんでいる事実に気づかなかった。父親を奪わないことがだと信じ、父親のそのものが娘を追い詰めている能性から目を背けていた。
「もういいよ。凛は何も謝らなくていい」
私は娘を抱きしめた。
「これからは、お母さんがちゃんとする」
「お母さん、もう丈夫だよ」
凛が私の背をさすった。
その優しさが、逆に痛かった。
私はそこで決めた。もう「族を元に戻す」ことを目標にしない。夫婦関係を修復し、で同じへ帰ることを正解だとわない。私が守るべきなのは族という形ではなく、娘がして眠れる活だった。
事件から週ほどして、私は弁護士へ相談した。姉が探してくれた、庭問題に詳しい女性だった。
夫もすでに代理をてていた。
そして夫側からてきた主張を聞き、私は再びあののにいたと同じ息苦しさをじた。
夫は川の来事を「幸な難事故」と言い続けていた。
それだけではない。
私が精神に定で、被害妄から夫を犯罪者に仕てげ、さらに凛へ父親を悪く言い聞かせていると主張していた。
証拠として使おうとしていたのは、私が泣いているところを勝に撮した、あの画だった。
私は机ので拳を握った。
あの々のが、すべてつながった。
夫は私をらせ、泣かせ、その瞬だけを残していた。
そして今、その記録を使って、今度は娘まで奪おうとしていた。