みかん小説
本棚

"一等くじの切れ目" 第19話

、空はよくれていた。商の央に机が置かれ、透な硝子鉢のへ同じきさの応募札が入れられた。鉢を用したのは、を挟んだ向こうの理髪だった。会は片桐とたね、そして協賛ではない町内会の婦が務めた。岩崎はしれてち、鐘を持たなかった。あのクリスマスのと同じ所なのに、町ののち方も、顔つきも違って見えた。

応募は全部で百世帯だった。番号を振った札を、見に来ていた子供たちが順番にかき混ぜる。最初に等の活用品を引き、次に等の鍋を引いた。会のあちこちからさな歓声ががる。子は美津の隣で控えを握っていた。願ってはいけないのではないか、と瞬ったが、それもおかしい。と同じように当たってほしいとうことまで、違いにする必はない。

最に等の番が来た。片桐は硝子鉢のを全員へ見せてから、町内会の婦に札を枚引いてもらった。女はを広げ、数字を声にした。「百番」。子の控えは番だった。久枝が「ああ」とさく言い、修は肩を落とした。子自も、胸のどこかがすとんと抜けたようにじた。これで本当に洗濯は別のへく。分かっていても、簡単には笑えなかった。

当選者は歳の男性、佐々吉郎だった。

広告

くの自転修理で働いており、最父親とで暮らし始めたという。彼がへると、見物していた婦のが「若い男のにはもったいないね」と冗談めかして言った。別のは「田さんへ譲ってあげれば」とにした。吉郎の顔が曇った。自分が正しく当たったのに、んでいいのか迷っているようだった。

子は垣を抜け、吉郎のへた。「おめでとうございます」。吉郎はし慌ててをげた。「でも、田さん……」。子は首を振った。「私も欲しかったです。いまでも欲しいです。でも、今はあなたが引いたんです」。言い終わると、ので別の声がした。こう言えるまでに、自分がどれほど洗濯を欲しがったか、誰も分からないだろう。それでいい。欲しかったからこそ、に譲れとは言いたくなかった。

吉郎は、父がを悪くしていることを話した。母は数にくなり、の洗濯を父が引き受けていたが、には体がえて困っていたという。「僕が休みのにまとめて洗ってるんです。でも、なかなか追いつかなくて」。子はうなずいた。事を聞いたから彼にふさわしくなったのではない。聞くから、彼には正しく当たる権利があった。そうえたことが、子にとってはきかった。

子は元の応募控えを、折り曲げないように握っていた。

角くじのには、角の切れ目ひとつで何もかも疑わしくなった。その記憶があるので、今度の札は番号を読みげるも、枚引くも、皆の目に見えることが嬉しかった。美津は母の横顔を見て、「当たったら、どうする?」とそっと聞いた。子は笑って「うちへ運んでもらうさ。今度こそ、ちゃんとね」と答えた。娘は初めて、母がまだ洗濯を欲しがることを恥ずかしがっていないとり、したようだった。

会をる、修が母のを引いた。「今度もれたね」。子は正直に答えた。「そうだね。残だった」。修はし考えてから「じゃあ今度は買おうよ」と言った。子供には簡単に言える言葉だった。だが子は否定しなかった。「そうしよう。しずつ貯めようね」。美津が反対側でさくうなずいた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: