"一等くじの切れ目" 第14話
元の朝、町にはいがった。子が戸をけると、隣の根も共同井戸の縁もくなっている。子供たちはない餅を半分ずつ分け、栄はさな鉢の炭を起こした。子はのにいるだけでは落ち着かず、所へ始の挨拶にた。商のシャッターはほとんど閉じていたが、たねの豆腐だけは簾をし、寄りのために湯豆腐を売っていた。
「今朝、岩崎さんのへったがいるよ」とたねは言った。協賛のうち数軒が、福引のやり直しと会計の公を求めているらしい。だが反対もかった。暮れに買い物をしてくれた客へ、いまさら「当たりは違いでした」と言うのは恥だし、正々同士が揉めれば信用を失う。たねは「だからこそ、まずは違いを認めるしかないとうんだけどね」と言った。子は彼女のの温もりに救われた。
へ戻る途、子は町の掲示板のでを止めた。商会の名で『歳末福引の当選について確認』というが貼ってある。から誰かが赤鉛で『田の奥さんがごねたから』ときしていた。胸がかっとくなった。自分がひとこと黙れば、誰も困らないという顔をするがいる。だが実際には、真はを追われ、娘は学へきづらくなり、ほかの客にも公平に景品が届いていない。
広告
困りごとは初めからそこにあったのだ。
そのの午、らない女性が子のへ訪ねてきた。岩崎が等を当てるつもりだった客、井佳だった。齢は半ばほどで、派な套を着ていたが、顔は疲れて見えた。「会から、宣伝に協力してほしいと言われていました」。井はそう話した。子は警戒したものの、茶をした。「洗濯が当たったように写真を撮り、そのあとへ返すことも承していました。でも、それが福引だとは言われませんでした」
「あなたは、景品をもらうつもりじゃなかったんですか」
「ええ。うちは洗濯をもう持っています。あのには昔世話になったから、広告の役ぐらいならとったんです」
子は言葉を失った。自分が妬んでいた『当たりを約束された裕福な』も、実は何をさせられるのからされていなかったのだ。井は静かに続けた。「私の名が載ったまであると聞きました。お願いです。その名を町にさないでください」。子はうなずいた。の暮らしを守ることと、正をらかにすることは、必ずしも反対ではないと初めてえた。
子のに『田さんが洗濯を台求した』という噂が回っていた頃、隣の老婦は度だけ言いに来てくれた。「私はあなたがそんなことするとはわないよ」
。子はありがたかったが、同に返事に困った。自分を信用してくれるがいるということは、別のを悪者にすることでしたくなる誘惑もある。子は「まだ全部は分かっていません」と伝えた。老婦はし驚いた顔をしたが、「そうかい、分かったら教えておくれ」と帰った。その返事が、子には何より助けになった。
井が帰る際、袋から枚のをした。岩崎から送られた広告のきだった。そこには『歳末福引、等気洗濯、幸福な主婦のへ』という文字と、井ので撮る予定の写真の指示がかれていた。のさな字には、当選者に景品を渡したあと商会へ返してもらう旨の文があり、井の同の印はまだ押されていなかった。子はそれを預かり、片桐のところへ届けることにした。