"一等くじの切れ目" 第9話
子は名簿をすぐに見せなかった。かれた名が本当に本の同で使われたかどうか分からなかったし、買い物客の名を町じゅうへばらまけば、しい迷惑をかける。たねだけに相談すると、女主はを目見て、「ああ、これじゃ噂のがく回る」と言った。その翌、はずつ確かめることにした。まず名のあった質の女主へ会いにった。
質の女主は、等のラジオを受け取る予定だった。しかし本は応募さえしていなかった。「会から、商の写真にてくれれば宣伝になると言われた。景品は商会に寄付してもいいと」。本は自分が当たりを引いたことにされるとはらない。名簿の別の客も、同じような依頼を受けていた。『広告への協力』と『抽選での当選』が、会の説のでいつのにか同じものになっていたのだった。
次に訪れたのは、豆腐のたねが薦めた元会計係の老・片桐だった。数までは商会の勘定をつけていたが、病気で役をりていた。片桐は帳面の数字を見て目を細めた。「から景品代が増えているのは、単に物がくなったせいだけじゃない」。町に型のしい商業施設ができ、柳町商の客は減っていた。そのため会は、福引を今まで以に派にして客を呼び戻そうとしたのだという。
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「商売を守ろうとしたのは分かるよ」と片桐は言った。「けれどのを、勝に板をつけるために使い始めたら、どこから誰の物か分からなくなる」。子は、岩崎がただ自分の懐へを入れているとは限らないとい始めた。灯の修理、抽選の設営、卸問への保証、どれも商のためと言えなくはない。それでも当たりを決め、景品を回収することが許されるわけではなかった。
帰り、美津が母を待っていた。夕暮れの舗で、娘は着の袖を握りながら言った。「お母さん、名簿を見たなら分かるでしょう。あのたちだって決まった当たりをもらうんだよ。私はただ、に洗濯が来てほしかった」。子が「それでも違う」と言うと、美津は目をそらした。「私は、お母さんが当たってぶところを見たかったの。あんなふうに『調べて』って言われるなんてわなかった」。
子は娘を責める言葉をみ込んだ。その気持ちを否定すれば、娘が母に向けた優しさまで踏みにじってしまう。けれど、優しさがあったから仕方ないとも言えない。は黙って帰り、玄関ので別れた。美津はその夜、洗濯を伝わなかった。子はで濡れたシャツをすすぎながら、自分のにできた細かい傷が娘を追いつめたのかもしれないとった。
質の女主のをる、子は「あなたが協力したと町に広めるつもりはありません」
と約束した。女性は肩の力を抜き、「お恥ずかしい話ですが、私はただの広告に載るだけだとってたんです」と言った。裕福そうな套を着ていても、の頼みを断れずに悩むことがある。子はその姿に、昔の自分をし見た。義理を果たせばいつか助けてもらえるとい、無理な内職を引き受け続けたことがあった。断れなかったと、を騙したを同じに扱うのは違うとった。
夜半、商会から回覧板が届いた。『本度歳末福引は混乱を避けるためをもって終』。予定よりい打ち切りだった。そしてそのに、『運営を妨げる噂を流した者には然るべき処置を取る』とかれていた。子は赤鉛で付を囲んだ。あとしかなかった。