"一等くじの切れ目" 第8話
、商では福引の等景品としてラジオを渡す式がわれた。子はその客の様子をれた所から見ていた。抽選を担当する者は毎回違うが、箱の置き方は決まっている。穴のある面を客へ向け、係員が箱の底を片で支える。狙ったをへ寄せることができるのではないか。子は自分でもそんな疑い方をするようになったことがしかった。
午、たねのへ商主たちが何か集まった。福引の負担が昨よりくなっているのに、景品の数がないという話だった。魚の清吉は「会が灯の修理費をて替えたから仕方ない」と擁護したが、乾物の女主は「その修理費も払った覚えがある」と反論した。誰も正確な帳簿を見たことはない。商会のは会のでまとめて管理され、個々のには計額だけが告げられていた。
子が『枚』とかれた切れ端を見せると、女主は眉を寄せた。「今は軒が特別協賛になってるはずよ」。景品の半はその々がし、代わりに宣伝用の札をつけると決められていた。という数字は、偶然ではなかった。もし枚の特別くじが用されているのなら、等だけではなく、ほかの景品にも当たる者がもって決められていた能性がある。
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しかし、子がその考えをにすると清吉は愉そうに首を振った。「証拠もないのに疑えば、正の客が来なくなる」。たねが「だから、ちゃんと帳面を確かめたいんだよ」と言い返す。同士の付きいは何も続いており、簡単に黒をつけられない。魚と乾物は同じへ仕入れにき、子どもたちは同じ学に通っている。の暮れに商が割れれば、困るのは会ではなかった。
その晩、子のでは正彦が嫌に洗濯物を干していた。栄が仕事を減らされたので、計を守るためにも、買い物は最限にしていた。美津は学へったあと、所を休んでいる。仲に何を言われるか怖いというのだ。子は娘の枕元に使いかけの鉛を見つけた。端にはさく『等は枚、の箱』といてあり、そのに別の字で『のいう通りにしてはいけない』とあった。美津だけの考えではない。誰かと相談しながら事をめていたのだ。
乾物のは、に売れ残った昆布を束ねながら話した。「昔は福引の等なんて、米俵だったよ。それでもみんな嬉しがった。今はラジオだ、洗濯だって、変なことになっちまった」。清吉は「客がぶ物をさなければ、隣町へ取られる」と言った。ともを守りたいのは同じなのに、見ている先が違う。
子は商いの難しさを初めてじた。買う側の自分には、の値札の向こうにある支払い期限も、主の借も見えなかった。ただ、それを客への嘘で埋めていいとはえなかった。
翌朝、真が隠れていた空き作業へ弁当を届けると、は使い古した袋を差しした。「会の指定したの名です」。袋のには軒の名が並んだがあり、それぞれの横に顧客の名と景品の番号が記されていた。子は膝がたくなった。受け取るはずだったのは、困っている客だけではない。会の親類や商売の得客の名もあった。