みかん小説
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"「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝" 第20話

縁側のと、甘いの約束

満の桜が散り、緑の初を越え、あいに再び実りのが巡ってきた。 酒『ふみ子』は、限定醸造として世にるや否や、全国の酒鑑評会で最位の賞を総なめにした。 「奇跡の超との炭が醸した至の美酒」として経済誌やグルメ雑誌に々に取りげられ、本数万円のプレミアム価格がつくほどの社会現象となった。 だが、峰酒造と集落の契約は、最初の歩から微だにしなかった。 源の環境を守るため、産量はに湧きる余剰の範囲内に厳格に制限され、得られた収益の部は、過疎に悩むこの集落の福祉基や森林保全のために、惜しみなく還元され続けた。 集落の入りにはさな製の案内板がち、週末には方から名を求めてある々が静かに訪れるようになった。限界集落と呼ばれた寒に、穏やかで誇りい活気が戻ってきたのだ。

の彼岸が過ぎた、のある夕暮れ。 源次郎の元に、通の封が届いた。 差の欄には、しに傾いた、見慣れた息子の跡で『佐伯』とあった。 源次郎は縁側に腰をろし、静かに封を切った。 便箋には、震える文字で、自らの罪への懺悔が綴られていた。

『父さん。会社は倒産し、横浜の自宅も競売で失いました。すべては、親の恩を忘れ、欲に目を眩ませた私の自業自得です。

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……翔太の結婚式にも、わせる顔がなく伺えませんでした。父さんに許してもらおうなどとはいません。ただ、度でいいから、座してお詫びがしたい……本当に、申し訳ありませんでした』 インクの所々が、涙で滲んでいた。

源次郎はを膝のに置き、夕に染まる裏をい見つめていた。 畑では、今も根の瑞々しい青葉がに揺れている。 やがて源次郎はちがり、引きしから枚の便箋と鉛を取りすと、い返信をしたためた。

『へ。はやれんが、薪の割り方ぐらいなら教えてやる。にまみれてき直す覚悟があるなら、いつでもへ来い。 父より』

甘やかしはしない。だが、己の非を悟り、から汗を流してやり直そうとするが子を、永に見捨てることもしない。 それが、半世紀をと共にきてきた、父としての最の矜持だった。

その夜、空には点の曇りもない満が冴え冴えと輝いていた。 源次郎は縁側につの座布団を並べ、ふみ子の遺を静かに置いた。 そして、切にしまってあった瓶『ふみ子』の封を切り、つの猪に並々と注ぎ入れた。 を浴びて、澄んだ酒がに揺らめく。 源次郎はそのつを、妻の遺のに供えた。

縁側の向こうでは、自らので甦らせた裏の炭窯が、かりのに堂々たるを落としている。

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そしての裏からは、チョロチョロと、絶えなく湧きる清流のせせらぎが、よい子守唄のように響いていた。 源次郎は自分の猪を持ちげ、静かに妻へと掲げた。

「……ふみ子。横浜をた朝はな、すべてを失ったとっとったよ。も、息子も、おも……。だが、そうじゃなかった」 の夜が、縁側の鈴をチリンと優しく鳴らした。 「おの故郷に来て、ハツさんや藤さんに会えた。翔太が最の嫁を連れてきてくれた。峰さんが、おの名の酒を造ってくれた。そして……も、ようやくを踏んで歩きそうとしとる」 源次郎は、酒を含んだ。 舌のに広がる、どこまでも清らかで、い慈しみの甘み。

「ふみ子。おのがな、みんなを幸せにしてくれたぞ」 鈴がもう度、澄んだ音で鳴り響いた。 それはまるで、『っていたわよ、お父さん』と、妻が笑って応えてくれたかのように聞こえた。 源次郎は満の空を見げ、満ちりた笑みを浮かべた。 夜の帳の、岩から湧きる甘いは、今も、も、そして百先も、誠実にきる々の命を潤すように、清らかに流れ続けていた。

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