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"「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝" 第8話

の孤と、温かな囲炉裏

の旬、信州の奥に本格なが到来した。 晩でメートルを超える豪がり積もり、集落は界から完全に切りされたの孤島となった。 朝、戸をけると、の壁が軒先まで迫っていた。 だが、源次郎には途方に暮れているなどなかった。朝に起きると、まず自ののを掻き分け、そのでメートルにあるハツのまでのを、で掘りめた。 歳の独居老が、に埋もれて転倒すれば命取りになる。 源次郎のスコップがを穿つリズミカルな音に気づき、ハツが障子をけて顔をした。 ハツはまみれになって汗を流す源次郎の背を見つめ、何も言わず、ただ両をわせて々と拝んでいた。

の夜は、どこまでもく、静まり返っていた。 源次郎は居の囲炉裏に自ら焼いた炭を熾し、鉄瓶に裏の湧を満たして自鉤(じざいかぎ)に掛けた。 純度のい炭は、煙も匂いも切さず、赤々と熾った芯から柔らかな赤線のを放ち、底えのする古民を芯からめてくれた。 シュンシュンと湯気をげる鉄瓶の音を聞きながら、源次郎は仏のふみ子の遺に向かって、そのあった来事を語りかけるのが課となった。 『ふみ子、今はハツさんのの根のろしをしてきたよ。

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お礼にって、派な干し柿をもらった。藤さんは、になったら田植えを伝ってくれと言っていたぞ』 返事はない。折、炭がパチリと爆ぜるさな音が返ってくるだけだ。 それでも、源次郎には妻が囲炉裏の向かいに座り、穏やかに相槌を打ってくれている温もりが、確かにじられていた。

晦の夜には、藤とハツが打ちの割蕎麦と菜の煮物を持って訪ねてきてくれた。 は囲炉裏を囲み、湧で割った酒を酌み交わしながら、くの寺からに乗って届く除夜の鐘の音にを傾けた。 「佐伯さん、あんたがこのに来てくれて、本当に良かったよ」 藤が湯呑みを掲げ、赤ら顔で笑った。 「このはもうにゆくだとっとったが、あんたの槌の音を聞いていると、まだ捨てたもんじゃないとえてくるんだ」 「私の方こそ、皆さんのおかげでかされております」 源次郎は々とをげた。 横浜をた朝、絶望の底で握りしめた呂敷包み。あのには像もできなかった温かな絆が、このい奥で、確実に結ばれていた。

いがようやく終わりを告げた。解けが川を勢いよく流れる頃、裾には蕗の薹(ふきのとう)とタラの芽が斉に顔をした。 ハツに案内されながらに入り、籠いっぱいの菜を収穫する。

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にはふみ子の周忌を迎え、のさなお寺の職に頼んでささやかな読経をあげてもらった。 でをわせるつもりだった本堂には、農作業のを止めたたち数名が、野のをに集まってくれていた。 『ふみちゃん、本当にいいお父さんを連れてきてくれたねえ』 読経の、ハツが涙ぐみながら遺に語りかける姿を見て、源次郎は畳に額を擦り付け、謝の涙を流した。

には総の井普請(清掃)に汗を流し、のお盆には、ハツと藤と共に玄関先で迎えを焚いた。 『ふみ子、帰っておいで。今のは、じゃないぞ』 煙が澄み渡る夕空へと真っ直ぐに昇っていった。 横浜のを追われてから、。 源次郎の肌は陽に灼けて浅黒くなり、には無数の豆と傷が刻まれていたが、その瞳には、かつて横浜で失いかけていた「職の誇り」と「きる歓び」が、力く満ち溢れていた。 そして、度目のが訪れたある。 集落の坂を、台のい軽自が、砂煙をげて登ってきたのである。

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