"箱詰めされた母の人生" 第16話
輔から届いた最の
が過ぎようとしていた頃、輔から通の封が届いた。
差の名を見た瞬、しだけ胸がざわついた。
だが昔のような未練ではなかった。
ただ、く関わったの名を見たの反射のようなものだった。
には、借の理を続けていることがかれていた。
活準をげ、返済を優先し、圭子からも部援助を受けているらしい。
そして最にこうあった。
《今になってやっと、俺は借を隠したことより、を自分の問題を解決する具として見たことのほうがきな違いだったと分かりました》
私はしばらくその文章を眺めた。
以の輔なら、「結果に取ってない」「返すつもりだった」といただろう。
なくとも、今は何が問題だったのかし分かり始めたのかもしれない。
だからといって、関係を戻す理由にはならない。
私は返信しなかった。
ただ封筒ごと箱へ入れた。
み続ける必もない。
許して元へ戻る必もない。
関係を終えたまま、自分のをめればいい。
その週末、母の居へった。
母はベランダでさな鉢植えを育てていた。
「見て。トマト」
「ベランダで?」
「さい種類ならできるんだって」
「の庭より狭いのに、結局何か育てるんだね」
「があると触りたくなるのよ」
内へ入ると、しいベッドの横に父の写真が飾られていた。
柄のカップも器棚にある。
古い実そのものはなくなったが、母が残したかったものはちゃんとしい活へ移っていた。
「輔から来たよ」
私が言うと、母はしだけを止めた。
「そう」
「返事はしない」
「それでいいとう」
「お母さんは?」
「私はもう、あのたちに言いたいことはないわ」
母は窓をけた。
のがカーテンを揺らした。
「許したわけじゃない。でも、毎ってきるのも、なんだかもったいないでしょう」
「くなったね」
「違うわよ」
母は笑った。
「自分のを自分のために使うことにしただけ」
その言葉を聞いて、私は輔や圭子が最も理解していなかったものが何だったのか、ようやく分かった気がした。
母のも、も、も。
すべて母のだったのだ。