"箱詰めされた母の人生" 第15話
誰かの言葉を信じるに
婚から半ほど経った頃、母とで旅へかけた。
げさな旅ではない。
でほどの温泉町だった。
母はしい靴を履き、昔よりしゆっくりした取りで駅の階段をった。
「エレベーターあるよ」
「まだこれくらいなら歩けるわ」
「無理しないで」
「歩美こそ世話を焼きすぎないで」
笑いながら宿へ向かった。
夕、部でお茶をんでいると、母がふと真面目な顔をした。
「あのね」
「何?」
「輔さんから、歩美が私をしんどいとってるって聞いた」
私は黙って母を見る。
「実は、しだけい当たることがあったの」
「い当たること?」
「話した、あんたが忙しそうに『ごめん、あとでね』って切ったことが何度かあったでしょう」
「あった」
仕事に母から話が来て、そっけなく切ったは確かにあった。
「だから輔さんに言われた、やっぱりそうだったんだってっちゃった」
私は胸が痛くなった。
「ごめん」
「責めてるんじゃないのよ」
母は首を横に振った。
「私も同じ。あんたが話してきても『丈夫』『何もない』ばかり言ってたでしょう。だからあんたも、私がでいたいんだって信じた」
「うん」
「嘘って、何もないところには入り込まないのね」
その言葉に私は考え込んだ。
輔がゼロからすべてを作ったわけではない。
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私たち親子の慮。
忙しさ。
「迷惑をかけたくない」という気持ち。
そこにしずつ嘘を差し込んだ。
だから真実のように見えた。
「これからは直接聞こう」
私が言うと、母は笑った。
「もう何回目、その約束」
「何回でも確認する」
「じゃあ私も」
母は湯みを置いた。
「歩美が誰かから『お母さんはこう言ってた』って聞いたら?」
「お母さんに直接聞く」
「よろしい」
「お母さんもね」
「分かってます」
私たちは顔を見わせて笑った。
その夜、布団へ入ったあと、私はの実の景をいした。
段ボール。
聞。
のセーター。
泣きながら「私たち何してたの」と言った母。
あのは失ったものばかり見ていた。
けれど今は違う。
私たちは、誰かの言葉より互いの声を信じる方法を覚えた。
傷がなかったことにはならない。
それでも、同じ所へ度と戻らないためのものはに入れたとう。