"箱詰めされた母の人生" 第13話
母のためではなく、母が決めた引っ越し
しい部への入居がづくにつれ、実には再び段ボール箱が増えた。
と同じ景だった。
しかし、空気はまるで違っていた。
今回は母が自分で引っ越し業者を決め、必な具と放す具を分け、粗ごみの申し込みまで済ませていた。
「この棚、どうする?」
「しい部には入らないから処分する」
「お父さんが買ったやつだよ」
「物は物よ。いは持っていけるでしょう」
以の母なら、父とのいがあるという理由だけで何でも残していただろう。
けれど今は、自分がこれから暮らしやすいかどうかで選んでいた。
もちろん、父の写真や腕計、族のアルバムは切に箱へ入れた。
ただ、それも「捨てられないから」ではなく、「持っていきたいから」だった。
引っ越し、所のたちが挨拶に来た。
「幸子さん、本当にっちゃうの?」
「ですぐよ」
「娘さんのところへくの?」
母は笑った。
「違うの。自分で借りた部へくのよ」
以、輔から「娘夫婦に迷惑をかけないため施設へ入る」と聞いていたもいたらしく、驚いた顔をするがいた。
母は細かな事までは話さなかった。
「いろいろあったけれど、今は自分で決めたの」
それだけだった。
誰かにれまれる必もない。
翌朝、引っ越し業者のトラックが到着した。
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若い作業員たちが次々と荷物を運びし、部から具が消えていく。
最に残ったのは、父の写真が入ったさな箱だった。
母はそのへしゃがみ込んだ。
着ているのは、あの夜と同じのセーターだった。
私はわずち止まった。
、このを着た母は、段ボールに囲まれてさく座っていた。
今にも消えてしまいそうだった。
でも今、母の背はまっすぐだった。
「歩美」
「何?」
「つ聞いていい?」
「うん」
母はし真剣な顔で私を見た。
「私がこのをること、本当にいいとってる?」
私はを考えた。
以なら母は、私の「正解」を探していた。
今は違う。
ただ、娘の本を直接確認したいのだ。
「お母さんが自分で選んだ所へくなら、私はいいとってる」
「もし私が、やっぱりここへ残りたいって言ったら?」
「そのは、ここで全に暮らせる方法を緒に考えたよ」
母の目に涙が浮かんだ。
「そう」
「だからどっちでもよかった。お母さんが決めたなら」
母は袖で目元を拭いた。
そして最の箱の蓋を閉じた。
「じゃあ、こう」
その声はるかった。