"箱詰めされた母の人生" 第9話
婚より先に母が決めたこと
婚に向けた話しいをめる方で、母の活もしずつ落ち着いていった。
入居予定だった齢者向け宅は正式に取りやめた。
の売却もいったん止めた。
ただ、母はそこで「何も変えずに暮らし続ける」という選択をしたわけではなかった。
ある、実で緒に掃除をしていると、母が階段のから階を見げた。
「やっぱり、このは私には広いわ」
私は掃除を止めた。
以、輔が繰り返していた言葉と同じだった。
けれど今はが違う。
「そうう?」
「うん。膝も痛くなってきたし、庭もちゃんと入れできなくなってる」
私は黙って聞いた。
「でもね」
母は続けた。
「今度は私が決めたい」
「もちろん」
「施設じゃなくて、さなマンションみたいなところでもいいかなとってるの。駅や病院がくて、で買い物にけるところ」
私はわず、「緒に探そうか」と言いかけた。
しかし母は先回りするように笑った。
「最初はで見てみる」
「丈夫?」
「し緊張する。でも、これも勉でしょう」
数週から、母は自分で産会社を回り始めた。
休になると物件資料を実のテーブルへ広げ、虫鏡を使いながら駅までの距、スーパー、病院、管理費などを確認していた。
々私にも見を聞いた。
「この取り、どうう?」
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「お母さんが使いやすそうならいいとう」
「なら『歩美がいいって言うなら』で決めてたわね」
「今は?」
「私が決める。歩美の見は参考にするだけ」
母はいたずらっぽく笑った。
私はその変化が嬉しかった。
輔のしたことは決して良い結果をもたらしたわけではない。
傷つけられたからくなった、などと美化したくもない。
でも、度自分のを奪われかけたからこそ、母はもう度とへ決定権を渡さないと決めたのだとう。
かほど経った頃、母から話が来た。
「つ、気になる部があるの」
私も緒に内見することになった。
実からで駅ほどれた宅だった。
駅にはスーパーと商があり、総病院もい。建物にはエレベーターがあり、部は向きのるいDKだった。
母は玄関の段差を確認し、浴のすりに触れ、台所のさまで自分で確かめた。
「どう?」
私が聞くと、母はし考えて言った。
「いいとう」
「じゃあ決める?」
「今は決めない」
私はわず笑った。
「なんで?」
「晩考える」
以の母なら、輔に「気だからくしないと」と言われれば、そので判を押していたかもしれない。
今は違う。
自分が納得できるまで考える。
翌の昼休み、母から話が来た。
「決めたわ。あの部にする」
声がるかった。
「産さんには?」
「もう自分で話した」
「いね」
「晩ちゃんと考えたからね」
母の居が決まった。
そしてその初めて、母は古い実を本当に売ることを決めた。
今度は誰かに追いされるためではない。
自分が選んだ次の活へむためだった。