"箱詰めされた母の人生" 第6話
「あとはおだけね」
「きてるの財産です」
自分でも驚くほどい声がた。
圭子は眉をひそめた。
「そんな言い方をしなくてもいいでしょう」
「じゃあ、どういう言い方ならいいんですか」
私は隣の母を見た。
「お母さんは今ここにいます。も預も、お母さんのものです。私のものじゃない。もちろん、輔のものでもありません」
「だから族なんだから融通しえばって言ってるのよ」
「本に内緒で?」
圭子が黙った。
「母のを売らせて、本には『娘のため』と信じ込ませて、輔の借へ千百万円入れる。それを融通って言うんですか?」
圭子はなおも、「結果には何も取っていない」と繰り返した。
その言葉に、母がゆっくり顔をげた。
「私、まだきてます」
圭子の表が変わった。
「幸子さん、私は別にそういうで……」
「あなたは私を、として見ていなかったんですね」
母は震えるを膝ので握った。
「私は娘の幸せのためならとって、自分のを放す覚悟をしたんです。でも、それはあなたの息子さんの借を払うためではありません」
輔が顔を伏せた。
「どうせ娘に残すなら今使っても同じ。そうっていたんでしょう?」
圭子は答えなかった。
母の目に涙が浮かんだ。
それでも声は崩れなかった。
「私がんだあとのおを、私がきているうちから自分たちのものとして計算していた。
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そういうことですよね」
い沈黙が落ちた。
私はバッグへを伸ばした。
あのの夜。
圭子のスマートフォンがった、私は最初の通だけでなく、その直に表示された返信画面も自分の携帯で撮していた。
見るつもりはなかった。
けれど「処理した」という異常な言葉を見た瞬、この先何かあった、自分の記憶だけでは押し切られるかもしれないとった。
私は保していた画像をき、携帯をテーブルの央へ置いた。
輔と圭子が同に覗き込む。
の顔が変わった。
画面には輔の文章が残っている。
《母さん! 歩美の母親のことは俺がうまく処理したよ(笑)》
そしてその。
圭子からの返信。
《さすが。あとはおだけね》
誰もをかなかった。
「読みましょうか」
私は言った。
「やめろ」
輔が初めてい声をした。
「どうして? 内同士の冗談なら問題ないでしょう?」
「そういうじゃない」
「じゃあ、どういう?」
輔は答えられなかった。
圭子が突然、「の携帯を勝に見るなんて非常識よ」と声をげた。
私はわず笑いそうになった。
「非常識なのは、母を『処理する』と表現して、そのあと『おだけ』と確認していたことです」
「言葉のあやよ」
「言葉だけですか?」
母が静かに尋ねた。
「あなたたちは実際に私へ嘘をつき、施設へ連れてき、産会社へ話を持ち込んでいます。
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それでも『言葉だけ』なんですか?」
圭子はを閉じた。
輔が母へをげた。
「お義母さん、本当に申し訳ありませんでした」
母はしばらく彼を見ていた。
「私、処理されたんですね」
輔の肩がねた。
「違います」
「何が違うんですか?」
「言葉が悪かっただけです」
「言葉だけじゃありません」
母はつずつ数えるように続けた。
「あなたは私に、娘が私を負担にっていると嘘をつきました。施設の方にも娘が関わりたくないと嘘をついた。産会社へ急いで現化できる期を尋ねた。そして、私のおを借返済に使おうとした」
輔は何も言えなかった。
私はその姿を見て、結婚活の終わりをはっきりじた。
借があったからではない。
失敗したからでもない。
失敗を隠すために、自分を信頼していたの気持ちを壊し、そのが自ら財産を差しすよう仕向けた。
私はその事実を、もう夫婦という言葉で包むことができなかった。
「帰ってください」
母が言った。
輔は顔をげた。
「お義母さん……」
「私はまだきています。これからどう暮らすかも、をどうするかも、私が決めます」
度目の「帰ってください」は、さらにかった。
輔がちがった。
圭子も続いた。
玄関へ向かう直、圭子は何か言いかけたが、私は遮った。
「今はもう結構です」
ドアが閉まった。
鍵をかけた瞬、私は壁に背を預けた。
母も子に座ったままきく息を吐いた。
終わったように見えた。
だが実際には、ここから私たちは「壊されたものを元へ戻す」作業を始めなければならなかった。
夫との活。
母のまい。
の売却。
そして千百万円の借。
何より、度切り裂かれた親子の信頼を、もう度と誰かの言葉で壊されない形へ変える必があった。