"箱詰めされた母の人生" 第5話
「1300万」
圭子は自分が何を言ったのか気づいたらしく、慌ててを押さえた。
「今のは違うの。言葉のあやで……」
「分です」
私は静かに遮った。
輔は両で顔を覆ったまま、何も言わなかった。
「お義母さんはってた。輔には、私に言えないほどきなおの問題がある」
「だからって、あゆみさん……」
「それを隠すために母を施設へ入れ、を売らせようとしたんですか?」
圭子は反論しなかった。
その沈黙が答えだった。
私は夫を見た。
「輔。何にいくら必だったの?」
「……」
「あなたが今までしたことを全部、弁護士に持っていって確認してもらってもいい。でも、そのに自分ので話す最の会をあげる」
輔の肩が震えた。
母も隣から静かに言った。
「私にも教えてください。私のを売ってまで必だったおが何だったのか」
輔はい、顔をげなかった。
計の秒針だけが響く。
分ほど経ったころ、ようやく彼がをいた。
「……全部もらうつもりじゃなかった」
私は眉を寄せた。
「何の話?」
「千百万、全部使うつもりじゃなかったんだ」
「じゃあ、いくら?」
また沈黙した。
私は歩も引かなかった。
「いくら必だったの?」
輔は観したように目を閉じた。
「……千百万」
空気が止まった。
母の指が膝のでかなくなった。
「千百万?」
私が聞き返すと、輔はさく頷いた。
「借だ」
たった文字で、このかの異様なすべてに説がついた。
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「いつから?」
「くらい」
「どうしてそんな額に?」
輔は途切れ途切れに話し始めた。
から持ちかけられた事業への投資。
最初に入れたが戻らなくなり、損失を取り返そうと別の投資へをしたこと。
その資のためにカードローンや消費者融を使い、さらに返済のため別の借り入れをねたこと。
典型な悪循環だった。
「どうして私に言わなかったの?」
「言えなかった」
「も?」
「軽蔑されるとったんだ」
私は夫を見ながら、りよりもい虚しさをじていた。
「だからお母さんを騙したの?」
「最初からそんなつもりじゃなかった」
「じゃあ、いつから?」
輔は答えなかった。
「お母さんがを売りたいと言ったからって、さっき言ったよね。でもそれも嘘でしょう。あなたが私に捨てられたとわせて、を放す方向へ誘導したんだから」
「俺は……」
「千百万を返して、残った百万だけ母へ返すつもりだった?」
輔は顔をげた。
「借さえなくなれば、俺の料でしずつ返せるとった」
「誰に?」
「え?」
「誰に返すの?」
私は母を指した。
「お母さんは、輔に千百万貸すってってた?」
母は首を横に振った。
「りません」
「私は?」
当然、らない。
「貸したことすららない相に、どうやって『返した』ことにするの?」
輔の顔から最の言い訳が消えた。
それは借ではない。
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返す相に説もせず、同も取らず、勝にをかそうとしていた。
私はそこまで言ってから、圭子を見た。
「お義母さんは、どこまでってたんですか?」
圭子は目を逸らした。
その反応だけで分だった。
輔のいつきではない。
なくとも途から、圭子も息子の借と母のを結びつけて考えていた。
「お母さん」
私は母に言った。
「こののおは、円も渡さなくていい」
「当たりでしょう」
母の声には、これまでにないさがあった。
けれど圭子は、そのになってもまだ納得していなかった。
「でもね、あゆみさん」
彼女は腕を組み、まるでこちらが酷であるかのような表を浮かべた。
「輔だって騙された側なのよ。友達に持ちかけられた話で失敗しただけでしょう。夫婦なら、こういうこそ助けうものじゃないの?」
私は呆れてものが言えなかった。
母の財産を本に黙って使おうとしたことさえ、「助けい」にすり替える。
そして圭子は次の瞬、とうとう本をにした。
「それに、どうせ幸子さんの財産って、いずれあゆみさんが相続するんでしょう?」
母の肩が震えた。
圭子は構わず続けた。
「最終にあゆみさんのものになるおなら、今、夫である輔がしくらい使わせてもらったって同じことじゃない」
その言葉を聞いた、私は初めて理解した。
このたちは、母がまだきているという当たりの事実さえ見ていなかった。
そして、この話しいの直。
私はのに、まだしていない最の証拠を置くことになる。
あの、義母のスマートフォンに表示された「処理した」という言葉。
そのには――私がらなかった、圭子からの返信まで残っていた。