"残高ゼロの通帳" 第8話
暴かれた百万円
「母さん、これ……何なんだよ」
信吾が突きしたハガキを見た瞬、節子の顔から血の気がサーッと引いていった。
「な、なんでもないわよ! 昔の……古い続きの案内に決まってるでしょ!」
節子は慌ててハガキをひったくり、エプロンのポケットへねじ込もうとした。しかし、極度の活苦と疲労で神経をすり減らしていた信吾の力に敵うはずもなかった。信吾は母親の首を掴み、ハガキを奪い返すと、圧着された接着面を力任せに引き剥がした。
に印字されていた定期預の預入額。
『百万円也』
「百万……? 母さん、これ、親父がくなったの保険か退職だろ!? あの『葬式と営宅の引き払いで銭も残らなかった』って、俺に泣きついて全部の続きを丸投げしたじゃないか!」
「そ、それは……! 万がのための、私の老のおじゃないの! 親の老資にをすなんて、あんたそれでも息子なの!?」
「ふざけるな! がないって言うから、俺は無理してこのに同居させたんだぞ! それだけじゃない……俺が毎の料に、ゆきに内緒で母さんに渡ししてきた万円! 『だけじゃ細いから、遣いをくれなきゃきていけない』って泣きつくから、で万円も渡してきたんだぞ! あのはどこへったんだよ!」
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信吾の絶叫に、節子はき直ったように顎を突きした。
「使ってないわよ! あんたから貰ったおなんて、円も使わずに別の通帳に貯めてあるわよ! 息子が親に仕送りしたを、親が貯して何が悪いって言うのよ!」
節子は寝へ駆け込み、庫代わりの箱から冊の通帳を持ってきてテーブルに叩きつけた。
信吾が震えるで通帳をく。
そこには、のから先まで、毎の付で『現預入 〇、〇〇〇円』の印字が、然と並んでいた。
残、万円。
定期預の百万円とわせ、節子の隠し財産は実に『百万円』に達していた。
「……じゃあ、母さんのは? 偶数に振り込まれてるはずの遺族と基礎は、体どこに使ってたんだよ!?」
「私のは私のお遣いよ! を買ったり、さちさんたちとお茶をんだり、体に通ったりするのに使って何が悪いの! 活費は同居してる息子夫婦がすのが世の常識でしょ! ゆきさんがいたは、文句つ言わずにちゃんと計が回ってたじゃないの!」
「回ってたんじゃない! ゆきが自分の料から、毎万もして全部被ってくれてたんだよ!」
信吾はを抱え、に崩れ落ちた。
胃の腑がねじ切れるような悔が、全を駆け巡る。
妻が毎万円ものをのために支し、自分は母親に言われるがまま毎万円を貢ぎ、そのせいで遣いがりなくなると「今きついから代してくれ」
と妻に甘えていた。
その裏で、母親は自分のを全額遊びに使い、息子から巻きげた仕送りを銭も使わずに隠し持ち、んだ父親の遺産百万円を懐に抱え込んだまま、「暮らしの貧乏」を演じ続けていたのだ。
そして、その欲の果てに、妻の料細を勝に盗み見て「万を全部よこせ」と迫り、反論されたら「ていけ」と罵倒した。
その暴挙のすべてを、自分は「母さんに悪気はない」「おがになれ」と笑って見逃し、母親の方をして妻を追いしたのだ。
「俺が……俺が全部ぶち壊したんだ……」
信吾の慟哭が、え切ったリビングに虚しく反響した。