"誤爆LINEの夜" 第2話
「あっくん」の正体
最初にに浮かんだのは、すぐ子へ話をかけることだった。
「今のLINEは何だ」と問い詰めればいい。
だが発信ボタンに指を置いたところで、俺は止まった。
今問い詰めれば、おそらく子は否定する。
「本当に送り違えただけ」
「友達の冗談」
「酔っていた」
いくらでも言い訳はできる。
そして、もし本当に男をへ呼ぶ予定だったのなら、俺が疑っているとった瞬に予定を止するだろう。トーク履歴を消し、写真を消し、連絡先の名を変えれば、それで終わる。
俺の元に残るものは、消された通のLINEの通だけだ。
そこで俺は、すぐには帰らなかった。
ホテルのロビーへ戻り、ソファに座った。
静になろうとった。
しかし胸の内側では、何かいものがずっと暴れていた。
の結婚活。
俺が仕事で遅くなった夜。
子が「先に寝るね」と送ってきた。
休勤でを空けた。
張。
み会。
のにいくつもの付が浮かんだ。
《いつもみたいに》
あの言が、何度も俺を刺した。
その、会社から貸与されているスマートフォンが鞄ので震えた。翌の予定変更をらせるメールだった。
取りした瞬、ある考えが浮かんだ。
今のLINEが送り違いなら、本来送るはずだった相がいる。
相の名までは分からない。
だが、メッセージのから考えて、子がその男をかなり親しい呼び方で呼んでいる能性はい。
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俺は過の記憶を探った。
数週だったか。
休に子がリビングでスマホを触りながら、誰かから届いたメッセージを見て笑っていた。
俺がづくと画面を伏せた。
その、通の冒に「あっくん」と表示されていた気がする。
当は学代の友か何かだろうとった。
だが今は違った。
俺は会社のスマートフォンに個用のLINEアカウントをに作った。
本来、私用に使っていい端末ではない。
それでも、そのの俺は正常な判断ができていなかったのだとう。
表示名を「あっくん」にする。
プロフィール画像は設定しなかった。
そして子のアカウントを検索し、メッセージを送った。
《子? 俺。スマホ壊れてLINE作り直した》
既読がつくまで分もかからなかった。
《あっくん?》
臓がきく鳴った。
予が当たった。
俺は続けた。
《そう。急に源入らなくなってさ》
《びっくりした。もう来る途?》
それを見た瞬、指先から血の気が引いた。
本当に来る。
しかも、何の確認もなく「あっくん」だと信じた。
俺は返信した。
《もうし。そういえばスマホ壊れて写真も全部消えた》
しを置き、
《に撮った写真、残ってる?》
子から笑っているスタンプが届いた。
《えー、全部?》
《全部》
《かわいそう》
《で撮ったやつ送って》
そこから既読がついたまま、分ほど返事がなかった。
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さすがに自然だったか、とになった。
だが次の瞬。
写真が枚送られてきた。
俺は息を止めた。
子がらない男と肩を寄せて写っていた。
所はホテルでも居酒でもない。
俺たちのだった。
ろに、俺が選んだリビングのカーテンが見える。
男は代くらい。
見覚えがあった。
会社の別部署にいる青敦。
忘会や全体会議で何度か顔を見たことがある男だった。
子はその青の肩へを乗せ、俺には久しく見せていなかったような笑顔をしている。
俺は震えるで写真を保した。
すると子が続けた。
《これ番好き》
もう枚。
今度はで俺ののソファに座っていた。
さらにもう枚。
写真の付を見ると、半だった。
半。
なくとも半、俺は何もらなかったのだ。
《今も同じ格好する?》
子からそう送られてきた。
俺は画面を閉じた。
もう分だった。
疑いではない。
勘違いでもない。
俺の妻は、俺をわざわざホテルへ追いやり、そのに男を自宅へ招こうとしている。
しかも、それは初めてではない。
俺は会社のスマートフォンを鞄へ戻し、ちがった。
子には、
《あと分くらい》
とだけ返した。
もちろん「あっくん」として。
そして自分のスマートフォンからは、
《ホテル着いた。の準備して寝る》
と送った。
子はすぐ、
《おやすみ♡ 張頑張ってね》
と返してきた。
俺は、その文字を見て初めて笑った。
今夜。
俺は予定通り帰宅する。
ただし、子が待っている「あっくん」より先に。