"すり替えた味噌汁" 第5話
法廷への踏み絵
係官に促され、玲奈は法務省の面接へとを踏み入れた。
広々とした内の正面には、テーブルを挟んで名の面接官が並んで座っていた。央に座るのは、京検の次席検事。を固めるのは法務省の事課や最検の検事たち。いずれも数々の凶悪事件を扱い、幾の被疑者の虚飾を剥ぎ取ってきた、鋭いベテラン法曹たちだった。
「座ってください」
央の次席検事が静かに告げた。
玲奈は指定されたパイプ子に腰をろし、背筋を伸ばした。膝ので揃えた両の指先が微かにえていたが、顎を引き、真っ直ぐに面接官たちの線を受け止めた。
質問は、刑法や刑事訴訟法の度な解釈論から始まった。
共犯の脱期、違法収集証拠の排除法則、未必の故における認識の程度。玲奈はこれまでの修習で叩き込んできた判例と学説を、淀みない論理な言葉で簡潔に回答していった。
面接が盤に差し掛かった頃、事課が元の調査から目をげ、玲奈の顔をじっと見つめた。
「神田さん。あなたの法律識の正確さはよく分かりました。では、つ実務な倫理観について伺いたい」
課はペンを置き、指を組んだ。
「もし、あなたにとって最もな族——配偶者や親族が、刑事事件に該当するな法為にを染めた疑いがじた、あなたはどう対処しますか。
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法を司る検事として、あるいはのとして、その葛藤をどう処理しますか」
面接の空気が、シンと静まり返った。
任官選考において、族関係や倫理観を試すためにしばしば投げかけられる、定型な定問答のつ。
しかし、今の玲奈にとって、それは机の空論などではなかった。
わずか数分、自宅の台所で現実に突きつけられた、自らの血肉を削るような問いそのものだった。
玲奈の脳裏に、泣き叫ぶ義母の顔と、取り乱す夫の々しい懇願がよぎった。
——内なんだから、ので話しおう。
その甘い誘惑を断ち切ったばかりの玲奈の唇から、言葉が迷いなく紡ぎされた。
「……自らので実を挟むことなく、速やかに客観な捜査関に委ねます」
面接官たちの眉が、わずかにいた。
「族であるからこそ、内ので判断をすことは許されません。そこに私が混入すれば、真実は歪められ、結果として罪を犯した族自の更のをも閉ざすことになります。法のの平等とは、内を庇いてしない峻厳さのにしか成しません。私は、たとえそれが自らの肉親であっても、証拠を保全し、法の続きに従って第者の裁きを受けさせます」
玲奈の声には、切の躊躇も、虚飾もなかった。
それは、今朝彼女が自らした決断そのものであり、自らの魂に刻みつけた誓絶の言葉だった。
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面接官たちは互いに顔を見わせ、元の評価シートにペンをらせた。央の次席検事が、微かに元を緩め、く頷いた。
「結構です。神田さん、あなたの覚悟はよく伝わりました」
約分の面接が終わり、部を退した瞬、玲奈は廊の壁にをついた。
張り詰めていた緊張の糸が解け、どっとい疲労が押し寄せてくる。
しかし、ち止まっているなどなかった。
携帯話の源を入れると、画面には裕からの着信が件、そして警察署の代表番号からの着信通が件入っていた。
留守番話の再ボタンを押す。
『——所轄の宿警察署刑事課です。神田裕様からの通報を受け、ご自宅の台所から保全されていた保容器を押収いたしました。参考として、お義母様の神田節子様から事聴取をっております。神田玲奈様にも、被害関係者として至急、当署までお越しいただきたくじます』
械な音声が、現実の歯が完全に戻りのできない速度で回り始めたことを告げていた。
玲奈は呼吸をつ落とし、たい気配の漂う霞が関のへと歩みした。
庭という名の温が崩壊し、徹な法のがすべてを暴きてるが、幕をけていた。