"四万円を断った朝" 第3話
百万円の仕事
「特別補佐?」
私は聞き返した。
「そうです」
耶はじなかった。
「現監督の席ではありません。私直属で阪事業の数字と現を調べてもらいます。は百万円。結果をせば別途報酬もします」
百万円。
数字だけならのような条件だった。
私が応募した現監督の与は万円台。借を返しながら活するなら以かかってもおかしくない。方、目のの仕事なら数で終わる。
それでも私は即答した。
「断ります」
耶の眉がわずかにがった。
「理由を聞いても?」
「私を使い捨てるには条件が良すぎるからです」
社に沈黙が落ちた。
私は机のの正資料を指で軽く叩いた。
「ここまできな数字がいているのに、社内の誰も気づいていないはずがない。気づいていて黙っているか、関わっているかです。そこへ借持ちでろ盾のない元現監督を放り込む。問題が起きれば、私を切れば終わる」
「ずいぶん疑いいですね」
「を信じた結果がこれです」
私は自分の履歴を持ちげた。
「千万円の授業料を払いましたから」
耶はしばらく私を見た。
朝、を断ったよりい沈黙だった。
「確かに、あなたを守れる保証はありません」
「なら答えは同じです」
「でも、その借から逃げ続ける活を続けるんですか」
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私は表を変えないよう努めた。
「それは私の問題です」
「そうですか」
「に乗せていただいた借りは、タイヤ交換で相殺ということで」
私はをげた。
そして社をた。
帰りのエレベーターでは、自分が馬鹿なのか賢いのか分からなかった。
階へりた、朝とは別ので社員の線が集まった。
社が直接連れていっただらけの男。
その噂はすでに回っているらしい。
私は誰とも目をわせず会社をた。
その夜、んでいた古いへ戻ると、修理を営む源がトラックのブレーキを分解していた。
歳。
私は会社を辞めた、きを失っていたに彼の物置同然の部をく借りていた。
「遅かったな」
源は具を置かずに言った。
「面接は?」
「受かりませんでした」
「そうか」
「代わりに百万円の仕事をされました」
カン、と具の音が止まった。
源がトラックのから顔をした。
「もう回言ってみろ」
私は苦笑した。
「百万円。でも断りました」
「でも打ったのか」
夕の簡単な煮物をに、私は朝からの来事を説した。
女性社。
怪しい阪事業。
特別補佐。
。
そして私が断った理由。
源は黙って酒をんでいた。
全部聞き終えると、彼はコップを置いた。
「おはまだ、に騙されたことを言い訳にしてるんだな」
「言い訳じゃありません」
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「同じだ」
「また利用されろと?」
「違う」
源は私を真っすぐ見た。
「利用されるのが怖いから、最初から勝負に入らない。今のおはそう言ってる」
「相は巨企業ですよ」
「だから何だ」
「社に利用されれば、今度こそ全部失います」
源はで笑った。
「お、何が残ってるんだ」
言葉が止まった。
「仕事はない。はない。借はある。誇りだけ抱えて夜に荷物を運んでる。その誇りが飯をわせてくれたか?」
私は拳を握った。
「だったらのためなら何でもしろと?」
「逆だ」
源は具箱から本の古いレンチを取りした。
「おには現を見る目がある。それをに変えろと言ってる。具は使われるためにある。でも、使われ方を決めるのは持ち主だ」
「私は具じゃない」
「じゃあ駒になるな。盤面を覚えろ」
源は言った。
「相が将軍なら、おも将軍になる方法を考えろ。最初から逃げるやつが自分のを取り戻せるか」
その夜、私は眠れなかった。
何度も社で見た類がに浮かんだ。
価格差。
材料の等級。
異常な運送費。
私は現管理をやってきた。
数字を見れば、どこで無理が起きているか分かる。
あの資料には、らかに何かがあった。
そして何より、耶は私のみをったうえで仕事をしてきた。
翌朝半。
私は洗ったシャツに袖を通し、古い靴を磨いた。
原グループの受付へくと、昨と同じ女性が驚いた顔をした。
「様?」
私は言った。
「島社に伝えてください」
度息を吸う。
「昨の話を引き受けに来た、と」
受付の女性が内線へを伸ばした。
その瞬から、私はもう戻りできない所へ自分からを踏み入れた。