"剣を捨てない花嫁" 第17話
父が初めて私に負けた
父がを越えた頃、久しぶりに稽古をした。
「本だけだ」
「無理はしないでください」
「誰に言っている」
昔と同じ調だった。
刀を構える。
父はを取っていた。
だが構えにはまだ威圧がある。
私は歳の頃から、このに勝ちたかった。
度も本気では勝てなかった。
打ちいが始まる。
父の撃はかった。
私は受け流し、距を取る。
度目。
度目。
昔なら焦って踏み込んだだろう。
でも待った。
父の呼吸がわずかに乱れる。
肩ががる。
その瞬。
私は踏み込んだ。
。
乾いた音が響いた。
父の刀が止まる。
私は構えを解いた。
「本」
父はしばらく黙っていた。
やがて笑った。
初めて見る笑い方だった。
「くなったな」
「昔より?」
「ああ」
「剣が?」
父は首を振った。
「お自がだ」
胸がくなった。
歳のから、ずっと欲しかった言葉だったのかもしれない。
けれど今の私は、それがなくてもっていられる。
だからこそ、素直に受け取れた。
「ありがとうございます」
父は刀を置いた。
「弟には、好きなことをさせる」
「はい」
「を継がなくてもいい」
「はい」
「今さらだな」
「今からでもいいといます」
父は頷いた。
私たちはしばらく並んでを見た。
ここで私は息子として育てられた。
ここで勝つことしからなかった。
でも今は、もうんでいない。
忘れたわけではない。
許したことと、なかったことにするのは違う。
私はその違いも学んだ。