"剣を捨てない花嫁" 第8話
女たちが笑わなくなった
志乃が帳をされてから、敷の空気はし変わった。
私を見る女たちの目にも、以のような骨な嘲笑はなくなった。
だからといって、急に好かれたわけではない。
ただ私が臣に守られるだけの嫁ではなく、自分で帳簿を読み、違いを見つけ、言うべきことを言うだと分かったのだとう。
佳代も変わった。
ある朝、彼女は破れた掛けを持って私のところへ来た。
「奥様」
また裁縫かとい、構えた。
「教えていただけますか」
「何を?」
「受けです」
わず聞き返した。
「受け?」
「この、台所で転んで腰を打ったんです。奥様なら転び方もなんでしょう」
私はし笑った。
「転び方にももあります」
庭で簡単な受けを教えると、いつのにかの女まで集まってきた。
初めは面半分だった。
だが何度かやるうち、皆真剣になった。
「をついてはいけません」
「怖いです」
「最初はゆっくりでいい」
その様子を見ていた臣が笑った。
「を始める気か」
「そんなつもりは」
「悪くない」
その言から、久世の庭で女性向けの稽古が始まった。
女だけではなく、所の商の娘や子どもを連れた母親まで来るようになった。
剣を教えるというより、姿勢や運び、を守るための距の取り方を教えた。
私は初めて、剣が勝つためだけのものではないとった。
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実では勝てと言われ続けた。
負ければ価値がないとっていた。
だがここでは、昨よりしてるようになった女の子が笑うだけで、分うれしかった。
ある、さな娘が母親に向かって言った。
「私も澄先みたいになりたい」
胸がくなった。
先。
それは父の代わりではない。
自分の名で呼ばれる所だった。
臣はの端で、その様子を見ていた。
「楽しそうだな」
「はい」
「嫁に来てから番いい顔をしている」
「そんなにひどい顔をしていましたか」
「かなり」
私は笑った。
「教えてくれればよかったのに」
「言えばるだろう」
「りません」
「では言う。最初のは、試で本取られたより怖い顔だった」
私はわず刀で彼の肩を叩いた。
臣はげさに痛がった。
周囲から笑い声ががった。
その、私は初めてこので笑われることが嫌ではなかった。
からかわれているのではない。
緒に笑っているのだと分かったからだ。
ただ、すべてが穏やかになったわけではない。
志乃は表向き静かにしていたが、私への敵を失っていなかった。
そしてある午、彼女の姪・絹乃が久世を訪れた。
美しいだった。
い黒髪を丁寧に結い、着物の裾も乱れず、茶をす仕まで完璧だった。
私にはないものを、すべて持っているように見えた。
彼女は臣ので微笑んだ。
「お久しぶりです」
その声を聞いた瞬、胸の奥がざわついた。
私はそこで初めて、自分が臣を失うことを怖いとっていると気づいた。