"出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜" 第3話
凍結した夜を越えて
「申し訳ございません、お客様。夜帯の定期旅客便はすべて終しております。現点で羽田へ向かわれる最速の段は、朝発の全空始発便となります」
航空会社のコールセンターの静な回答に、亮平は唇を噛み切るほどく噛み締めた。血のが内に広がる。
発の便に乗れば、羽田到着は分。そこからタクシーをばせば、午半過ぎには神奈川県内の自宅へ辿り着ける。
だが、今この瞬も、美と苗はあの気配る物置のにうずくまっているのだ。あと。歳の娘が、え切ったコンクリートの底で母の体温だけを頼りに震え続けるは、永の拷問に等しい。
「予約をお願いします。朝の便、普通席でもプレミアムでも何でもいい、番の席を抑えてください」
震える指で決済を済ませると、亮平は即座に会社の直属司である営業部へメッセージを打ち込んだ。
『庭内において命に関わる緊急事態が発いたしました。朝の札幌支社における会議および顧客訪問には席できません。全責任は、退をもってお引き受けいたします。代理のご配をお願い申しげます』
送信ボタンを叩き、返信を確認することなく画面を伏せた。世も、キャリアも、周囲の評判も、この瞬すべてがの芥に成り果てていた。
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守るべきものはただつ、妻と娘の命だけだった。
亮平はスーツケースをけ放ち、脱ぎ散らかしたシャツや類を無造作に放り込んだ。ファスナーを力任せに閉じ、コートを羽織って部をびす。
ホテルのフロントでチェックアウトを叩きつけるように済ませ、通りへびしてタクシーに滑り込んだ。
「千歳空港まで! 速を使って、番く着くルートで頼みます!」
「お客さん、このじゃ空港のロビーも閉まってますよ?」
「いいからってください! 頼みます!」
運転はバックミラー越しに亮平の鬼気迫る形相を認め、それ以何も言わずにアクセルを踏み込んだ。
夜の央自。混じりののを、ヘッドライトの条だけが切り裂いていく。
亮平は部座席でを固くし、沈黙するスマートフォンを見つめ続けていた。苗の端末へ、美の古い端末へ、幾度となく発信を繰り返す。しかし、波は度と届かなかった。
——美、苗、持ちこたえてくれ。
胸の奥で、祈りとも懺悔ともつかない叫びが渦巻いていた。
なぜもっとく、妻のを引いてあのをなかったのか。
母の貴子は、昔から世体と自らの支配欲に異常な執着を持つ女だった。父がきていた頃は辛うじて綱が引かれていたが、夫をくし、男である亮平のに同居してからは、「このは私のだ」
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と言わんばかりに振るい始めた。苗がパートにて計を助けようとすれば「母親がを空けるなんて」「息子の稼ぎがりないみたいで恥ずかしい」となじり、美がテストで良い点を取れば「私の教育がいいから」、しでも儀が悪ければ「母親のしつけがなっていない」と苗を責めてた。
苗はそれに耐えかね、幾度も涙を流していた。その姿を見ながら、自分は「母さんも寂しいんだよ」「寄りの言うことだから受け流してくれ」と、全帯から評論のように諭すだけだった。自分が母の方をすることで、庭内の平穏を保っているのだと錯覚していた。
だが、それは平穏などではなかった。妻と娘の尊厳を贄に捧げて得ていた、偽りの寧に過ぎなかったのだ。
午過ぎ、千歳空港の暗い国際線ターミナル連絡通のベンチに、亮平は座り込んでいた。
の切られた空港内は寒々しく、シャッターのりたロビーには警備員の巡回靴の音だけが響いている。凍えるようなプラスチックの子に腰掛け、亮平は両で顔を覆った。
もできなかった。瞼を閉じれば、暗ので「パパ、寒いよ」と泣く美の顔が浮かびがり、臓が鐘を打った。
午分、搭乗ゲートの保検査がいた。
亮平は番にゲートをくぐり、ボーディングブリッジを駆け抜けて内の最列席に座り込んだ。
定刻、体が轟音とともに暗黒のの空へといがる。窓のには、のに広がる漆黒のが見えた。
「待っていてくれ……今、くからな……」
拳を膝ので固く握りしめ、亮平は祈り続けた。