"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第16話
「お昼は何にしますか」
札には、滲んだ文字で「あん餅」とかれていた。美穂が、種類から種類へ減らした、文子ののひらへ返した札だった。文子は温かい餡餅を皿につ置き、族の真んへした。
「赤字になるメニューを戻したわけじゃないからね」
誰も何も言っていないのに、文子は先に言い訳した。健が笑い、真弓は「分かってる」とつ取る。美穂も餅をにした。皮はしく、の餡は甘すぎない。噛むと、文子ので初めてべた正のをいした。
「おいしいです」
「当たりだよ」
文子はそう言いながら、し嬉しそうだった。
べ終わる頃、美穂がふと聞いた。「お母さん、のお昼、何にしますか」。健が吹きした。真弓は「あのと同じこと聞くの?」と笑う。文子はの朝をいした。赤い通が貼られ、もも失いそうなに、美穂が蔵庫をけて「今のお昼、何にしますか」と聞いたあの。
あのは腹がった。が潰れそうなのに、事の話をするなんて、現実が見えていないとった。
今なら分かる。美穂は現実を見ていなかったのではない。現実を見たうえで、今べるものまで捨てる必はないとっていたのだ。追い詰められるほど、は先、週先のきなだけを見る。けれど、目のの昼をべ、眠り、体を休めることができなければ、を救うための判断さえできなくなる。
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美穂は会社を辞めた、しばらく何もしない期があった。健と結婚してからも、無理にの仕事へ戻らなかった。以は、そのことを文子は「根性がない」とじていた。しかし美穂にとって休むことは、壊れたとを元へ戻すだった。昼寝をする姿だけを見て、ので何が起きているかまで分かったつもりになっていた自分を、文子はし恥ずかしくった。
文子は「はうどんにしよう」と答えた。
「餅なのに?」
「餅は売るほどあるからね」
また笑いが起きた。
その夜、美穂はいつもの子でうたた寝をした。膝掛けの端がへ落ちる。以なら誰も触らなかった。文子はレジからて端を拾い、健は照をつ落とし、真弓はの話の音量をさくした。誰も「寝てばかり」とは言わない。
文子はその晩、自分が美穂へ最初に抱いた苛ちを健へ話した。「あの子が昼の話をした、本当に腹がったよ。こっちはが終わるとってたからね」。健は「俺も同じだった」と答えた。だがとも、追い詰められたほど普通の活を続けることが難しく、同に切なのだと今はっている。べること、眠ること、体を休めること。それを削って作った売は、を残しても族を壊すかもしれない。文子は翌のうどんに入れる葱を蔵庫へしまいながら、あのの美穂の問いを初めて優しい言葉としていした。
真弓もその話を聞き、「私もあのは美穂を見て腹がった」と認めた。「でも、今は昼をべるをばしたら、お母さんより先に私がられる」。美穂は「りません。数字にします」と答え、健がまた笑った。族ので、休むことを恥ずかしいとう空気はもう消えていた。
美穂が目を覚ますと、膝掛けは肩まで掛かっていた。、美穂は自分で引きげなければならなかった。今は違った。数字より先に変わったのは、族が美穂を見る目だったのかもしれない。