"姉の身代わりで嫁いだら、冷酷当主の本命でした" 第5話
崩れ始めた実
最初のが届いたのは、婚礼からかほど経った頃だった。
差は父ではなく、篠原の古参の番だった。
《お元気でしょうか。突然のお便りをお許しください。最、の帳面がどうにもわず、もし差し支えなければ度だけ見ていただけないでしょうか》
澄乃は何度も読み返した。
父から命じられたなら断るつもりだった。しかし、くを支えてきた番が困っているとうと、胸が痛んだ。
静に見せると、彼は「おが決めればいい」と言った。
「くなとも、けとも言わないのですか」
「篠原のことだからな」
「私はもう氷のでしょう」
「だからこそだ。命令して決めることではない」
澄乃は翌、返事をいた。
帳面そのものを持ちすことはできないので、違いがやすい項目だけを説し、庫と支払いを別々に確認するよう助言した。
しかし週、またが来た。
今度は父からだった。
《度戻って帳簿を見ろ》
頼みではない。
命令だった。
澄乃はそのを静かに畳んだ。
返事はさなかった。
さらに半すると、美津からも届いた。
《族なのだから困ったくらい助けるのが当たりでしょう》
澄乃は読み終えると、わず笑ってしまった。
自分を代わりとして送りしたには、もうに置いておく必がないと言ったたちが、帳簿がわなくなった途端「族」
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を持ちしている。
氷の仕事部で、静がそのを読んだ。
「きたいか」
「分かりません」
澄乃は正直に答えた。
「そのものには着があります。母がきていた頃から見てきましたし、く働いているたちにも恩があります。でも父たちのために戻るのは嫌です」
「なら、と族を分けて考えろ」
静の言葉は簡潔だった。
「を助けることと、あいつらの言う通りになることは別だ」
澄乃はその言葉を何度もので繰り返した。
数、篠原と取引のある商が氷を訪ねてきた。雑談ので、静が篠原の様子を尋ねると、相は気まずそうな顔をした。
「かなり苦しいようですな」
仕入れが過剰になり、売れ残りが増え、支払いの期も乱れているという。
澄乃には原因が分かった。
これまで彼女が季節ごとの売を見ながら仕入れ数を調していた。しかし父は「く仕入れればく売れる」と考えるだった。澄乃がいなくなれば、庫はすぐ膨らむ。
さらに玲子の婚礼具をくから揃え始め、価な品を幾つも買っているらしい。
「まだ縁談も決まっていないのに?」
澄乃が尋ねると、商は苦笑した。
「良いへ嫁がせるのだと、奥方が張り切っておりまして」
皮肉だった。
澄乃を代わりに使ってに入れた氷との縁を、美津は玲子の格をげる材料にしている。
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その夜、澄乃は帳面を閉じてから静に尋ねた。
「もし篠原が本当に潰れそうになったら、私は助けるべきでしょうか」
静はすぐに答えなかった。
「おはどうしたい」
「で働くたちは助けたい。でも父たちにまた利用されるのは嫌です」
「なら、そのに方法を考えればいい」
静はそう言うと、枚のを差しした。
それは篠原との古い商談記録だった。
澄乃は目を通し、途で息を止めた。
記録の付は、玲子への縁談が届くよりかも。
そして欄に、静自の跡でい言葉がかれていた。
《この帳面をいた娘について調べること》
澄乃が顔をげる。
静は逃げなかった。
「静様……これは」
彼は別の封筒を机のに置いた。
からてきたのは、篠原へ送られた最初の縁談の控えだった。
そこに玲子の名は、度もかれていなかった。
かれていたのは――
《篠原にて帳簿を預かる娘との縁を望む》
という文だけだった。
澄乃の指が震えた。
「では……姉への縁談ではなかったのですか」
静は静かに彼女を見た。
そして、ずっと伏せていた事実をにした。
「俺が会いたかったのは、最初からおだ」