"母の遺品と千万円の組紐" 第13話
帯締めの端の目たない所に、母が遺した微細な編み込みがあった。目を凝らして見ると、そこには母の技術で、極の文字で『すみれ』と編み込まれていた。
さらに、母の古いノートを読み返していた俺は、震える記述を見つけた。
『すみれの』とかれた空のページの数頁。何もから、毎き直されていた記述。
『輔へ いつか結ぶのために』
母は、俺に切り捨てられたあのからもずっと、いつか息子に渡すための帯締めを、毎構し続けてくれていたのだ。
「母さん……ありがとう……本当に、ありがとう……!」
来がった祝い着と帯締めを仏壇に供え、俺は声を震わせて祈った。
写真のの母は、いつもと変わらぬ穏やかな笑みを浮かべていた。
そして迎えた、の当。
れの澄み渡る青空の、仕てがった祝い着を纏い、俺が組み継いだ帯締めを締めたすみれが、座敷に姿を現した。
集まっていた紗英さん、さん、恵さん親子、所の々から、斉に嘆の息が漏れた。
「まあ……なんてらしい……!」
「幸恵さんの帯締めが、見事に蘇ったねえ……!」
すみれは嬉しそうにくるりと回り、俺を見げた。
「パパ、変じゃない?」
「変なもんか。世界で番、綺麗だよ」
神社への参をを繋いで歩きながら、すみれが青空を見げて言った。
「ばーば、見てるかな?」
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「ああ。絶対に見ているよ。ばーばの好きな、朝の空のだもんな」
吹き抜けた柔らかなが、すみれの帯締めのを優しく揺らした。まるで、母の温かいが、そっと娘の背を撫でてくれたかのようだった。
あれから数が経ち、『糸すみ』の格子戸からは、今も規則正しい丸台の音が響いている。
俺のは、まだ母の元にも及ばない。けれど、隣には組紐にになるすみれと咲奈ちゃんの笑顔があり、には母の技をする々の温かい輪が広がっている。
は、ではきていけない。見えない糸で結ばれた誰かのいに支えられて、今をきているのだ。
俺は窓から差し込む陽に目を細め、静かに指先をかした。
母が遺してくれたの糸を、次の未来へと繋ぐために。トントンと響く気よい音が、のへと優しく溶け込んでいった。