"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第17話
その瞳には、窮に追い詰められた獣のような、異様なが宿っていた。元に醜い笑みを浮かべ、私を指差して吠えた。
「……咲子、お、いい気になってるんじゃねえぞ! おだってのこと言えないだろ!」
「何のことかしら?」
「とぼけるな! 週、このをていく、おが誰のに乗ったか俺はちゃんと見てたんだぞ! うちの会社の清川社のだっただろ! 俺の倫を責めるに、おこそ社とデキてたんじゃないのか!?」
私は呆れ果てて言葉を失った。ろめたい関係であるならば、昼堂々、夫の目ので迎えのに乗り込むはずがないだろうに。
憲吾は私の沈黙を罪の証拠だと誤認したのか、ちがって勝ち誇ったように声を張りげた。
「やっぱりそうか! おい、これは派なスキャンダルだぞ! 社が部の妻と倫関係にあったとなれば、役員会で発解任だ! あいつが失脚すれば、営業トップの俺に社の座が回ってくるチャンスなんだよ! 咲子、お、あるで最の置き産を残してくれたな! あっははは!」
狂ったように笑いする元夫を見つめながら、私はれみすら通り越して、ただただ寒気を覚えていた。
気がつくと、隣に座っていたはずの翔太の姿がなかった。
「ママ、清川さんを連れてきたよ」
リビングの入りから、翔太の澄んだ声が響いた。
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憲吾の笑いが、ピタリと止まった。
引き戸の向こうから、の男性が静かに姿を現した。
仕ての良いスーツをに纏い、穏やかな微笑みを浮かべた清川社が、そこにっていた。
「原田さん、お邪魔しています。……廊まで声が筒抜けでしたよ。『スキャンダル』とか、『社の座を奪う』とか、ずいぶんと景気のいいお話が聞こえてきましたが……詳しく聞かせていただいてもよろしいですか?」
清川社の元は笑っていた。だが、その双眸の奥には、氷点の徹なが宿っていた。
そのにいた全員の背筋に、ゾクリとした戦慄がった。
「き……清川……社……!? な、なんで、あんたがここに……!?」
憲吾は腰を抜かしかけ、ソファーにへたり込んだ。
今回の反撃において、翔太が引きわせてくれた最の協力者こそが、清川社そのだったのだ。
以、翔太のでわれた講演会に清川社が登壇した際、元々ITビジネスに関のあった翔太は、その先なビジョンにく銘を受けた。講演、翔太は何度も清川社宛てになを送り、清川社も忙なを縫って返事をくうちに、は個な文通を通じて親交をめていたのだ。
翔太が歩へて、父親を見ろした。
「僕が清川さんを尊敬しているのは、パパの会社の社だからじゃないよ。として、経営者として、素らしい志を持っているから尊敬しているんだ。
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……同じ会社にいるのに、実の父親からは何つ学べるものがなかったのは、本当に残だけどね」
清川社が優しく翔太の肩にを置いた。
「私が親しくさせていただいているのは、翔太君の方ですよ。彼は非常に聡で、努力で、この業界の未来を担う素らしい才能を持っています。将来を嘱望される若き友として見守らせていただいていたのですが……まさか、が社の原田部のご子息だったとは、奇妙なご縁ですね」
社の淀みない説に、憲吾は完全に言葉を失った。
しかし、ここで引きがれば自分のが完全に終わると悟ったのか、憲吾は最の悪あがきとばかりに、社に向かってってかかった。
「し……実力主義の業界なんだろ!? あんたは創業者の父親が倒れたから、たまたま棚から牡丹餅で社の子に座っただけじゃないか! 営業成績だけで言えば、俺の方が会社に貢献してるんだ! 実力なら、俺の方が社に相応しいはずだ!」
自分の雇い主に向かって、公然と吐きされた反逆の言葉。
清川社はるでもなく、ふっとさく息を漏らした。
「……そうだね。君の言う通り、実力があれば、ね」
社のが、鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた。
憲吾の額から、タラリとや汗が流れ落ちる。
「君の規拓の営業成績がトップなのは事実だ。
……だがね、君が契約を取ってきたクライアントの、翌度の契約継続率は、全社でダントツのワースト位なんだよ」