"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第11話
顔をげると、翔太がまっすぐな、力い瞳で私を見つめていた。
「ママ。落ち込むのはにして。話は、ここからが本番だよ」
翔太は自分の机の引きしから、冊の分いクリアファイルを取りした。
「僕、ずっと準備してきたんだ。パパとおばあちゃんを、絶対に許さないために。……僕は、いつだってママの方だからね」
いつのに、この子はこんなにも逞しく、頼もしい青に成していたのだろう。
私は涙を拭い、息子の瞳を見つめ返して、力く頷いた。
そのを境に、私と翔太の秘密の防諜作戦が始まった。
度鏡をして観察してみれば、憲吾のは怪しさの塊だった。すぎる張、自然な帯の、肌さず持ち歩くスマートフォン、そしてシャツの襟元から微かに漂う、私のものではない甘いの匂い。
私が夫の審なきを探っていることを察したのか、義母がすかさず牽制を入れてきた。
「憲吾はきなプロジェクトを抱えて忙しいんだよ! 男の仕事にいちいち目くじらをてるなんて、本当に器のさい嫁だねえ! そんなことより、もっとまともな飯を作りなさいよ!」
義母の言う「そんなこと」が、単なる激務を指しているのか、それとも息子の貞そのものを指しているのか。翔太の話によれば、義母は息子の女性関係を完全に把握し、むしろ「甲斐性のある息子」
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として容認していたらしい。えば、にわたる私への理尽なモラハラも、夫の悪から私の目を逸らさせるための目眩ましだったのかもしれない。
だが、悔している暇はなかった。
私は翔太と綿密に連絡を取りい、来るべき決戦のに向けて、着実にを研ぎ澄ませていった。
攻防が始まってからヶほどが経った、ある曜の夕方のことだった。
仕事を終えて帰宅した私がリビングの引き戸をけると、異様な景が目にび込んできた。
ソファーの央に、見覚えのある所の配女性――佐藤さんが、神妙な面持ちで腰掛けていたのだ。佐藤さんは昔から義母と親交がく、所の奥様方のリーダー格のような物だった。
その向かいに、憲吾と義母が並んで座っていた。
「咲子、やっと帰ってきたか。そこに座りなさい」
義母が酷な声で命じた。
着替えるもなく、私はと対峙する位置の子に座らされた。
苦しい沈黙の、憲吾が腕を組み、偉そうにをいた。
「単刀直入に言う。……俺と、婚してくれ」
胸の奥で、カチリとたいスイッチが入る音がした。
(……来たわね)
数、翔太から『パパとおばあちゃんが、所のを巻き込んで何か仕掛けてくるかもしれないから気をつけて』と警告されていた、まさにその通りの展だった。
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私は切の揺をおくびにもさず、ポーカーフェイスを保ったまま尋ねた。
「……理由を聞かせてくれる?」
憲吾は待ってましたとばかりに、袈裟にため息をついて見せた。
「俺はもう限界なんだよ。おはパートの仕事にかまけてのことを何つしないし、翔太の教育だって俺に丸投げだ。妻としての務めを完全に放棄してるだろ」
憲吾が隣の義母に目配せをすると、義母が佐藤さんに向かって同を引くような猫なで声で捲して始めた。
「そうなのよ、佐藤さん。うちの憲吾はね、この女と結婚した当初から、耐えがたい精神苦痛を受け続けてきたのよ。憲吾は優しい子だから、なんとか庭を維持しようと必に耐えてきたのに、この女は全く協力じゃなかったの。私に対しても、毎ひどい暴言ばかりで……」
私は反論もせず、ただややかに義母の茶番劇を見つめていた。同席している佐藤さんは、相槌を打つこともなく、ただ静かに線を落として話を聞いている。
憲吾が、テーブルのに枚のいを叩きつけるように差ししてきた。
そこには、憲吾の几帳面な跡で、箇条きのリストがびっしりとき連ねられていた。
、事育児の伝いに訪れた姑に対する度なる暴言および精神虐待
、乳幼児期の育児を姑に押し付け、パチンコ等の遊興に耽った為
、々の清掃放棄、および栄養バランスを無した抜き料理の