"愛人と帰国した夫、30分の猶予" 第10話
がいる。
それはもはや、疑いようのない事実だった。
だが、今の私には何の証拠もない。に任せて問い詰めたところで、「証拠もないくせに言いがかりをつけるな! 嫌ならこのからてけ!」と逆ギレされるのがオチだ。
てくわけにはいかない。このは、き両親が命を削って遺してくれた、私の魂そのものなのだから。
それに、翔太のことがある。期を迎えたな息子に、父親の醜悪な貞をられたら、どれほどく傷つくだろうか。
混乱と恐怖でを抱えていると、ふと階で玄関のドアがく気配がした。
翔太が学から帰ってきたのだ。
リビングで話を続けている夫の声が、翔太のに入っては変だ。そうい直した私は、慌てて部をて、階段をりて翔太の部へと向かった。
コンコン、とドアを軽くノックしたが、返事はない。ノブを回してを覗くと、部のはもぬけの殻だった。
どこへったのかと首をかしげ、廊をリビングの方へ戻ろうとしただった。
暗い廊の奥から、制のブレザーを羽織った翔太が、静かな取りで歩み寄ってきたのだ。
私と線がぶつかった瞬、翔太は差し指を唇に当てて「シーッ」とさく図をし、自分の部を指差した。
「……入って」
導かれるままに息子の部に入り、私は勉机の回転子に腰をろした。
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翔太はベッドの端に腰掛け、私の張った顔を見つめると、ふっと困ったような、しげな苦笑いを浮かべた。
「……困ったパパだね、本当に」
その言を聞いた瞬、私のから血の気が引いた。
「翔太……あなた、まさか、さっきの話を……」
母親として、息子の純粋なを傷つけてしまったという絶望に打ちのめされ、私は顔を覆って俯いた。
しかし、私の予に反して、歳の息子は信じられないほど静だった。
「ママ、落ち込まないでよ。……ちなみに、さっきパパが話してた相、分だけど会社の受付嬢のだよ。番くらいのじゃないかな」
「……え?」
私は驚愕のあまり、目を丸くして息子を見つめ返した。
翔太は淡々とした調で、言葉を続けた。
「パパの会社で番美だって評判のなんだ。ママの方がずっと綺麗だけどね。付きって半くらいかな。僕、ヶくらいに塾の帰りの繁華で、パパがあのと腕を組んでホテルに入っていくのを見ちゃったんだ」
「翔太……っていたの……?」
「うん。ってたよ。……ママ、しショックかもしれないけど、ちゃんと聞いてね」
翔太のから語られた真実は、私の像を遥かに超える、おぞましくも滑稽な夫の正体だった。
「パパってさ、プライドの塊みたいなだから、何でも『番』じゃないと気が済まないんだよ。さっきの受付嬢は、会社で番の美女だからトロフィーとして連れ歩いてるだけ。
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そしてね……パパの『本命』のは、僕の今のピアノの先だよ」
「……ピアノの、先……!?」
「そう。音を首席で卒業して、全国コンクールで優勝した、あの若い先。パパはあの先にいい顔がしたくて、僕にピアノを無理やり続けさせてたんだよ。送り迎えにかこつけて、毎週のように先を説いてたんだ」
目のの景が、音をてて崩れ落ちていくようだった。
学の頃から夫が執拗に習い事をし、に送り迎えをしていた理由。
『番』に執着する夫の歪んだ虚栄。
「泳のも、英語のもそうだったよ。英語のは、スクールで番気の国講師の先だった。……それにね、このだってそうだよ。この町で番い丘の頂にあって、番きい敷だから、パパは自分のみたいに自して気に入ってるんだ。……ママのことだってそうだよ。昔、クラブで『ナンバーワン』だったから、自したくて結婚したんでしょ?」
息子の言葉のつひとつが、点と点を結び、恐ろしい本の線となって繋がっていった。
夫は私をしていたのではない。
『番気のホステス』という肩きと、『町で番きな豪邸』というトロフィーをに入れ、自分の肥化したプライドを満たしたかっただけなのだ。
あまりの浅ましさと愚かさに、私は激しい眩暈を覚え、机に突っ伏した。
そんな私の肩に、温かいがそっと置かれた。