"十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった" 第14話
曜の夕暮れ
午ちょうど。
曜の夕暮れの買いし客で賑わう売りに、見慣れた音がづいてきた。
古びた濃紺のブルゾンに、し擦り切れた子。には使い古された革の銭入れ。
証プライムの巨企業グループの頂点に君臨する男——藤堂周が、いつもの「百円の客」の姿で、ふらりと現れたのだ。
「いらっしゃいませ、藤堂さん」
千鶴がエプロンの裾をえ、満面の笑顔で迎えた。のあのと、何つ変わらない、からの会釈。
「今も、良いお汁のりがしているね」
藤堂は子にを当て、目尻にい皺を刻んで破顔した。
「ええ。今朝は築から最の鰆が届きましたから、京焼きが格別に美しく仕がっておりますよ」
千鶴は棚から、番に置かれていた百円の幕の内弁当をつに取った。
そして、ふといしたように、し奥に置かれていた、炊きたての湯気が微かに残る別のパックへとを伸ばしかけた。
「川さん」
藤堂が優しく元を制した。
「今は、そののものでいいですよ」
千鶴は目を丸くした。「え? でも、奥の方が来てで温かいですよ?」
藤堂は穏やかに首を横に振った。
「どれをにとっても、あなたが毎朝、を込めて並べてくれたものだ。のものであっても、奥のものであっても、私にとっては世界で番のご馳に変わりはないよ」
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その言葉に、千鶴の胸の奥がく震えた。
「……ありがとうございます、藤堂さん」
レジ袋に弁当を収め、百円の銭を受け取る。指先と指先が触れった瞬、言葉を超えたの絆が、静かに通いうのをじていた。
弁当を抱えた藤堂が、エスカレーターへ向かって歩きす。
千鶴はその背に向かって、く、くをげた。
「ありがとうございました。また来週、お待ちしております!」
藤堂は振り返らず、ただをすっとく掲げて応えた。その背には、代で帝国を築きげた男の威厳と、商売の原点をし続けるのの温もりが、夕暮れのを浴びて温かく溶けっていた。
の価値は、肩きで決まるものではない。
齢や雇用形態で決まるものでも、財布からされた額の寡で決まるものでもない。
誰も見ていない所で、目のの仕事とに対して、どれだけの誠実さを注ぎ込んできたか。
その積みねてきた々のみこそが、いつか自分を救い、周囲を照らし、未来を切り拓く揺るぎない力となる。
デパの賑わいのに、温かい笑い声が広がっていく。
千鶴は再びエプロンの紐を固く締め直し、次のお客様を迎えるために、誇りくを向いた。