"十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった" 第11話
特売の気と取り戻した誇り
正午を過ぎた品売りは、朝の静寂が嘘のような気に包まれていた。
藤堂会の鶴の声により、藤堂品の各から緊急のピストン輸送便が配され、午には、来ての温かい惣菜と弁当を満載した保トラックが次々と搬入へ滑り込んできたのだ。
「藤堂品の特売商品、ただいま到着いたしました!」
彩佳の元気な呼び込みの声がフロアに響き渡る。
売りの央には、のエプロンを締め直した千鶴がっていた。その胸元には、誇らしげに『川』の名札がっている。
「変お待たせいたしました! 本の来て、鶏ごぼう御膳でございます! お汁の染みた炊き込みご飯、まだ温かいですよ!」
千鶴が笑顔で声を張りげると、待ちわびていた客たちが次々とを伸ばした。
「川さん! 朝来たら商品がなくて配したのよ!」
「あなたがいると、やっぱりこの売りは活気があるわね!」
常連客たちが々に声をかけ、千鶴のから弁当を受け取っていく。千鶴はひとりの目を見て、をげた。
「ご配をおかけして本当に申し訳ありませんでした。今もを込めて並べさせていただきました。どうぞ、美しく召しがってくださいね」
売りには、かつての温かい笑顔と、活気あふれる会話が満ち溢れていた。
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森が「無駄だ」「非効率だ」と切り捨てようとした対面販売の温もり。それこそが、型スーパーやネット通販には決して真似のできない、このデパの最のみであり、魂だったのだ。
夕方。特売用に用された千以の弁当と惣菜は、つ残らず完売した。
売集計のモニターを見つめていた本部は、同比を遥かに回る驚異な数字に目を見張り、千鶴に向かってくをげた。
「川さん……本当に、ががります。商売の原点を、あなたに教えていただきました」
千鶴は静かに微笑み、エプロンのポケットから帳を取りした。
「本部。来週の曜は、くの官公庁がノー残業デーです。夕方からのい帯に、お酒のおつまみになる鉢のセットをめに並べておくと、お客様にんでいただけるといます」
「……承いたしました。すぐに仕入れ計画に反映させます」
本部の返答には、もはや契約社員を見すような空気は微もなかった。現の恵を真摯に敬う、の商売としての敬が宿っていた。