"十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった" 第5話
空っぽの棚と消えたトラック
運命の曜の朝が訪れた。
午分。週末の特売初を迎えた丸デパートの搬入には、本来であれば数台の納品トラックが列をなし、荷ろしの号とフォークリフトの警告音が鳴り響いているはずのだった。
勤してきた森は、ピシッと糊の効いたワイシャツの袖をまくり、得満面で従業員用通用をくぐった。昨夜、目障りだった川千鶴を完全に切り捨てた。週けには本社事部に「員理によるコスト削減の第弾完」として胸を張って報告できる。
だが、品フロアにを踏み入れた瞬、森のがピタリと止まった。
「……おい。これはどういうことだ?」
売りの景が、異常だった。
本来なら午までに搬入され、棚いっぱいに陳列されていなければならない惣菜コーナー、弁当コーナー、配品コーナーが、完全に「空っぽ」だったのだ。
ステンレスのたい棚が剥きしになり、蛍灯のが虚しく反射している。
「おい! 番の仕入れ担当! どこにいる!」
森が血相を変えて叫ぶと、事務所から青ざめた顔の主任が転げるようにってきた。
「て、! 変です! 藤堂品からの納品トラックが、台も来ていません!」
「はあ!? 何を言っているんだ! 今は特売の初だぞ! 聞折込チラシの目玉に、藤堂品の『特製鶏ごぼう御膳』と『作り惣菜詰めわせ』を限定百で載せているんだぞ! 話はしたのか!」
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「先ほどから物流センターにもにも話をかけ続けているんですが、まったく繋がりません! 担当者の携帯も留守番話になっていて……!」
計の針は、すでにを回っていた。の午まで、あとを切っている。
「ふざけるな! 契約違反だぞ! 損害賠償を請求してやる!」
森が狂乱したように鳴り散らしていたその、事務所の代表話が甲く鳴り響いた。森が受話器をひったくるように奪い取る。
「もしもし! 丸デパートの森ですが! 貴社はどういう管理体制をしているんですか! 特売用の納品がつも届いていないんですよ!」
受話器の向こうから返ってきたのは、藤堂品本社・営業統括本部の、を切交えない徹な声だった。
『森ですね。本の貴への全納品は、すべてキャンセルとなりました』
「……は? キャンセル……? 何を寝言を言っているんですか! 今どれだけの客がチラシを見てやってくるとっているんだ! 今すぐ臨便をせ!」
『能です。これは現のトラブルではありません。当社会直々の特命による「荷全面止」です』
「か、会……?」
森の脳裏に、巨品コングロマリットを代で築きげた伝説の創業者・藤堂周の名が浮かんだ。しかし、なぜそんなのの財界の巨が、方のデパートの納品にをすのか、森には全く理解できなかった。
『なお、本件につきましては、これより当社専務取締役が直接そちらへ伺い、公式に通達いたします』
ツーツーという無質な発信音が鳴り、話は方に切断された。
森のから受話器が滑り落ちそうになった。
その、フロアのエスカレーター付が、ざわざわと穏などよめきに包まれた。
「おい、見ろよ……」
「本社の役員が……黒塗りのハイヤーが何台も横付けされたぞ……」
売りの入から、仕ての完璧な黒いスーツを着た屈な男たちが、異様な威圧を放ちながら然と列をなして歩いてくるのが見えた。先を歩くのは、経済ニュースの常連である藤堂品の専務取締役。
森の背筋を、嫌な汗がツーと伝い落ちた。