"十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった" 第4話
赤いペンの暴力
千鶴の解雇に至るまでの数週、売りの空気はにに悪化の途を辿っていた。
任の森孝志にとって、このデパートの品フロアは単なる「本社営業本部への世のがかり」に過ぎなかった。
「比売%増、件費率%削減。この数字を叩きせば、の事異で本社の営業推部の子がに入る」
のデスクので、森は卓を叩きながらほくそ笑んでいた。彼が信奉するのは、効率と数字だけを絶対する徹なコストカット理論だった。
そんな森の目に、最も目障りなとして映ったのが川千鶴だった。
勤続。契約社員でありながら、の実績と周囲の信頼から、はパートよりも百円く設定されている。
「千百円の齢ババアを切り、百円の学アルバイトに入れ替えれば、の件費は確実に浮く。それに、あの女の接客態度は見ていて虫唾がる」
森が何より許せなかったのは、千鶴の「非効率な対面販売」だった。
千鶴は客ひとりに対し、季節の材の調理法を教えたり、体調を気遣ったりしながら買い物を伝う。客の側も千鶴を「川さん」と名で呼び、彼女のいるを狙ってやってくる。
「客と無駄話をしてを浪費するなど、チェーンストア理論のにも置けん。
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これからはセルフレジを導入し、客をベルトコンベアのように流して回転率をげる代だ。などという曖昧なものにが払えるか」
森は元の契約社員リストをくと、最段にかれた『川千鶴(61)』の名に、太い赤ペンで無慈なバツ印をき込んだ。
嫌がらせは、極めて計画かつ湿にわれた。
まず森は、千鶴をち続けてきたレジと対面販売の持ちから制にした。
「川さん、今からあなたにはバックヤードの荷受けと、凍倉庫の庫管理を担当してもらいます」
曜の朝礼で突然告げられた配置転換に、千鶴は言葉を失った。凍倉庫の温は氷点度。さキロを超える調料や凍肉の段ボールを、で運び続けなければならない過酷な労働だった。
「、私はずっと接客を……常連のお客様も待ってくださっています」
「会社の指示に従えないなら、今すぐ辞めて結構ですよ。いたからといって、楽な持ちに居座れるとったら違いです」
歳の千鶴にとって、その作業は過酷を極めた。凍てつく凍庫ので息をく吐きながらい段ボールを積みげ、指先はあかぎれで裂け、腰には鈍い激痛がった。
それでも千鶴は音を吐かなかった。
「私が休んだら、の若い子たちにこの労働が回ってしまう。
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私が頑張らなきゃ」
痛む腰を摩りながら、千鶴は黙々と荷物を運び続けた。
そんなあるの夕方、千鶴が倉庫からゴミしのために売りへた際、の常連客である老婦が声をかけてきた。
「あら、川さん! 探したのよ。うちの主が退院してね、消化の良い煮物をどれにしようか迷っていたの」
「佐々さん、ご主退院されたんですね! よかったです。それでしたら、こちらのの蕪の含め煮と、柔らかい真蒸(しんじょ)がよろしいかといますよ」
千鶴が笑顔で案内し、老婦が嬉しそうにカゴに入れたその瞬だった。
「川さん!!」
背から号がんできた。森だった。
「あなたは何をしているんですか! 倉庫の段ボール理が終わっていないのに、なぜ勝に売りにて客と油を売っているんです!」
老婦が驚いて目を丸くした。「さん、私が無理に呼び止めたのよ。川さんに相談したくて……」
「お客様、失礼ですが売りのオペレーションにをさないでいただきたい。当はどのスタッフでも同じ対応ができるようマニュアル化されておりますので」
森は客にをげながらも、千鶴を睨みつけ、吐き捨てるように言った。
「自分が特別なだと勘違いするな。代わりはいくらでもいるんだ」
その部始終を、通のから、あの百円の弁当を買いに来た藤堂周が、たい目で見つめていた。