"元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある" 第3話
「その子を田によこしなさい」
翌朝ちょうど、インターホンが鳴った。
度ではない。私が応答するに度、度と繰り返される。モニターには久美子がっていた。を固く結び、苛った表で腕計を確認している。か、私に荷物をまとめてていけと言ったと同じ顔だった。
私は両親に誠をお願いしようとも考えたが、やめた。
いつまでも逃げてはいられない。
ドアをけた瞬、久美子は挨拶さえしなかった。
「健から聞いたわよ」
玄関へ歩踏み込み、私をから先まで見回す。
「あなた、別の男との子供を産んだんですって?」
あまりにも予の言葉で、私は返事を忘れた。
どうやら健は、自分が父親かもしれないという能性を美や母親へ素直に話せなかったらしい。自分がかに捨てた元妻が、婚には妊娠していた。その事実を認めれば、昨の自げな再婚報告が滑稽になる。
だから彼は、私が浮気していたことにした。
「誰の子かも分からない赤ちゃんを抱いて、健のへてくるなんて、本当に浅ましいわね」
久美子は止まらなかった。
「田ではも子供ができなかったくせに、婚した途端に妊娠? 普通に考えたらおかしいでしょう」
その声で、奥から誠の泣き声が聞こえてきた。
私は気に静になった。
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このの鳴り声で、息子を怯えさせたくない。
「声を落としてください」
「何よ、その態度は」
「赤ちゃんが起きました」
私は久美子を玄関へ残し、誠を抱きげた。ところが久美子は靴を脱ぎ、勝に廊までついてきた。
「見せなさい」
「何をですか」
「その赤ちゃんよ。本当に健と何の関係もないのか、私が見れば分かるわ」
久美子は自信満々だった。
私はしばらく迷ったが、誠を隠す必はないとい直した。
「では、よく見てください」
私は誠を胸のに抱いたまま、久美子へ顔が見える位置までし向きを変えた。
その瞬だった。
久美子の表が止まった。
誠の目元は、健によく似ている。
特にし垂れた目尻と、のにあるさなほくろ。田では健もくなった義父も同じ位置にほくろがあり、久美子は昔から「田の血筋の印ね」と得げに話していた。
「……嘘」
久美子の唇が震えた。
「そんな……健に、こんな……」
私は言った。
「妊娠が分かったには、もう婚していました。でも妊娠週数から考えれば、いつ授かった子かはらかです」
「だったら、どうして言わなかったのよ!」
久美子の声が再びきくなる。
「言ったところで、信じてもらえたでしょうか」
私は彼女の目を見た。
「私は、子供を産めない女だと言われ続けました。婚するには『田に何も残せなかった』とまで言われました。
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そのたちに、どうして妊娠したとらせなければならなかったんですか」
久美子は言葉を失った。
しかし、それもほんの数秒だった。
やがて彼女の顔に別の表が浮かんだ。
悔ではない。
計算だった。
田の血を引く能性が極めてい男の子。
何も待ち望んだ「跡取り」。
久美子ので誠のが変わったのだ。
「由美さん」
声まで急に柔らかくなった。
「その子、本当に健の子なのね」
「必なら、いずれ正式な方法で確認できます」
「そう……」
久美子は誠をい入るように見つめた。
そして言った。
「だったら話は簡単じゃない」
嫌な予がした。
「あなたで赤ちゃんを育てるなんて変でしょう。今は仕事もしていないんでしょう?」
「育児が落ち着いたら働きます」
「そんな簡単なものじゃないわよ」
久美子はで笑った。
「あなたのご両親だっていつまでも元気じゃない。父親のいない子供を、こんな古いで育てるつもり?」
今度は私の両親まで侮辱するのか。
りが湧いたが、私は黙って聞いた。
すると久美子は、信じられない提案をにした。
「その子、田で引き取ってあげる」
私はを疑った。
「……何を言っているんですか」
「美さんを母親にすればいいじゃない。若いし、もある。健は収入も定してる。田の跡取りとして何自由なく育てられるわ」
「冗談はやめてください」
「あなたには百万円くらい渡してあげる」
目のの女性が、に見えなくなった。
私を「子供を産めない嫁」と責め続けたが、いざ私が子供を産んだとった途端、今度はを払ってその子を奪おうとしている。
「百万円?」
私はわず聞き返した。
「そうよ。悪い話じゃないでしょう」
久美子は、本気で親切な提案をしているつもりだった。
「歳で子連れなんて、再婚するのも変よ。赤ちゃんを私たちに任せて、あなたはをやり直せばいいじゃない」
私は誠をく抱きしめた。
「帰ってください」
「由美さん」
「この子は商品じゃありません」
声が震えた。
りで。
「いくら積まれても渡しません。健さんにも、あなたにも」
久美子の顔から笑みが消えた。
「がるのもいい加減にしなさい」
たい声だった。
「健が父親として正式に話をめれば、あなたのい通りにはならないわよ。おも社会信用も、田の方がなんだから」
私は何も答えなかった。
子供に関することは、だけで決まるものではない。
それくらい分かっている。
だからこそ専に相談しなければならない。
「週あげるわ」
久美子は靴を履きながら振り返った。
「をやして考えなさい。最には、あなたのためにもその子のためにも田へ来た方がいいと分かるから」
玄関の扉が閉まった。
私はしばらくそのからけなかった。
やがて奥から母がてきて、配そうに私を見た。
「由美、丈夫?」
「うん」
私は誠の顔を見た。
この子を守らなければならない。
そしてそのの午、学代の先輩で弁護士をしているへ連絡した。
婚直、度だけ相談していただ。
事を説すると、はしばらく黙った、静かに言った。
「由美さん。今度はで抱え込まないでください」
私は初めて、誰かに守られる側へってもいいのだとった。
そして庫から証拠を取りした。
が最初に目を止めたのは、倫の写真ではなかった。
健の斎から撮した、ある枚の類だった。