"元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある" 第1話
招待状を持ってきた元夫
「俺たち、来結婚式を挙げるんだ。おも祝ってくれよな」
玄関先でそう言った健は、かに私へ婚届を突きつけたとは別のようにれやかな顔をしていた。その隣には代半くらいの女性がち、まるで自分こそがこのを訪れる正当な理由を持っているかのように、健の腕へ親しげにを絡めている。私は腕のの誠を起こさないよう抱き直しながら、目ののを黙って見つめた。
婚して、まだかしか経っていない。それなのに健は、元妻である私の実までしい婚約者を連れてきて、わざわざ結婚式の招待状を渡そうとしていた。
「美っていうんだ。若いけどしっかりしてて、本当にいい子なんだよ。母さんもびでさ。やっと田にもるい未来が来たって」
健は私が傷つくことを承したうえで、その言葉を選んでいるように見えた。田にとっての「るい未来」が何をするのか、私はの結婚活で嫌というほどっている。子供。それも、名を継ぐ男の子。それだけが、元義母・久美子にとって嫁を評価する物差しだった。
私は、子供に恵まれなかった。
結婚目を過ぎた頃から、久美子は親戚の集まりのたびに「田をこの代で終わらせるわけにはいかないのよ」
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と言うようになった。病院に通い、検査を受け、薬の副作用に耐え、採血の跡を袖で隠して事を作っても、誰も私に「よく頑張っているね」とは言ってくれなかった。それどころか健まで、治療が引くにつれて「また病院?」「いったいいつまでがかかるんだよ」と苛つようになっていった。
それでも私は夫婦だから乗り越えられるとっていた。
、久美子が階段から落ちてを骨折したも、私は仕事を減らして病院へ通った。退院してからは買い物も、事も、入浴の補助も、リハビリへの付き添いもした。健は仕事を理由にほとんど顔をさず、久美子から返ってきたのは謝ではなく、「あなたは子供がいないんだからはあるでしょう」という言だった。
その頃から私は、自分の価値がしずつ削られていった。
そしてか。
「おとはもうやっていけない。俺にだって自分のを楽しむ権利があるだろ」
健はい封筒から婚届を取りし、卓へ置いた。私が「子供ができないから?」と尋ねても、彼は目をそらして「それだけじゃない。もうがないんだ」と答えただけだった。翌朝には久美子までやって来て、「慰謝料なんて図々しいこと言わないでしょうね。あなたは田に何つ残せなかったんだから」と言い放った。
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私は争わなかった。
正確には、争う力が残っていなかった。
類と私物をスーツケースつに詰め、たいのを実へ戻った。歳で結婚し、歳になるまで費やしたが、たったつの荷物に収まってしまったことがしかった。
けれど、その数週だった。
経験してきたはずの体の変化が来ないことに気づき、私は半ば諦めながら産婦科へ向かった。何度期待し、何度落胆したか分からない。だから診察で医師から告げられた言葉を、私は最初、理解することすらできなかった。
「妊娠されています。もうかに入っていますよ」
モニターには、さな命があった。
さくても、確かにいている臓があった。
待ち続けた奇跡は、夫から捨てられた直に私のところへやって来た。
私は健にも久美子にもらせなかった。
そしてか、誠がまれた。
腕ので眠るさな息子は、今まで私が流したすべての涙を洗い流してくれるようなだった。
その誠が、健の声に反応したのか、私の胸元でさくじろぎした。
「ん……」
柔らかな声が漏れ、おくるみの端から頬が覗く。
招待状を取りそうとしていた健のが止まった。
彼の目が、ゆっくりと私の腕へ移っていく。
「……由美」
先ほどまで自信に満ちていた声が、らかに震えていた。
美もようやく赤ん坊に気づき、眉をひそめる。
「何? その赤ちゃん」
私はの顔を順番に見た。
そして、できるだけ平静な声で答えた。
「私の子供ですけど。何か?」
健の顔から、みるみる血の気が引いていった。
彼は誠の齢を計算したのだろう。
婚からか。
か。
つまり私は、婚届へ判を押したにはすでに妊娠していたことになる。
「ま、待てよ。まさか……」
健が歩づこうとしたので、私は反射に誠を胸へ引き寄せた。
「お引き取りください。この子が起きますから」
「由美、その子……」
「結婚式、おめでとうございます」
私はそれだけ言い、玄関の扉を閉めた。
鍵をかけた直、で美が「どういうことなの」と健を問い詰める声が聞こえた。それでも私は扉をけなかった。
やがての音がざかる。
ようやく静かになった玄関で、私は誠の頬を見つめた。
健はまだらない。
私が妊娠のことだけではなく、婚直の彼について、もうつな秘密をっていることを。
そしてあのが持ってきた結婚式の招待状が、やがて彼ら自を追い詰める台への入になることも――。