"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第10話
あふれる未来へ
の気配がまり、鎌倉の々が鮮やかな葉に染まり始めたの週末。
の庭では、よいに乗って、炭のばしい匂いが漂っていた。庭の隅にしく据え付けられた製のブランコが、に吹かれてギイと優しく揺れている。
「お父さん、焼き芋そろそろ焼けたんじゃない?」
庭の縁側から声をかけたのは、髪をすっきりとポニーテールに結んだくるみだった。
「お、待ってろ。今トングですからな」
軍をはめた雅弘が、際よくアルミホイルに包まれた焼き芋を取りす。その顔には、かつて刻まれていた暗い疲労のは消えり、穏やかな父親の笑顔が戻っていた。
あのからヶ。
武田竜は未成者略取誘拐および居侵入の罪で起訴され、法廷での裁きを待つとなっていた。
くるみの活も、決して平坦なことばかりではなかった。戸籍の回復続き、伊豆の通信制への転入、そして何より「の空」によるアイデンティティの揺らぎに対するカウンセリング。折、伊豆での活をいして塞ぎ込む夜もあった。
しかし、えみと雅弘は決して焦らなかった。
無理に「昔のくるみ」に戻そうとするのではなく、「歳になった今のくるみ」をのとして受け止め、毎しずつ、しいいを積みねていった。
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「はい、くるみ。傷しないようにね」
台所から温かいほうじ茶の急須を持っててきたえみが、湯呑みをテーブルに置いた。
で並んで縁側に腰掛け、アツアツの焼き芋を割る。黄の湯気がちり、甘いりが広がる。
「美しい」
くるみが目を細めて笑った。笑ったときにの角がしだけがる、あの嬌のある笑顔だった。
「ねえ、お母さん」
「ん? 何?」
「来の……またにってもいいかな」
くるみの言葉に、えみと雅弘は顔を見わせた。
「私、やっぱりウェイクボードが好きだから。今度は……お父さんとお母さんに、私が波のを滑るところ、見てほしいんだ」
雅弘がを啜り、そっと目元を拭った。
「ああ、もちろん見にくとも。番の特等席で、特のカメラを持って応援するよ」
「やめてよ、恥ずかしいじゃない」
くるみが吹きし、庭にるい笑い声が響き渡った。
それは、もの、このから完全に失われていた、本物の族の笑い声だった。
えみは空を見げた。
ひとつないれのい空を、からのがどこまでも澄み渡るように吹き抜けていく。
もし、あの朝、カレンダーの付を見て絶望に沈んだままち止まっていたら。
もし、夫の反対に屈して、スマートフォンの画面を閉じていたら。
もし、警察に払いされたことで、自分の母親としての直を捨てっていたら——。
奇跡は、偶然に転がり込んでくるものではない。
どれほどい暗に閉ざされようとも、信じることをやめず、諦めることを拒み、傷つきながらも歩を踏みし続けたの執だけが、運命の歯をかすのだ。
階の窓からは、今もレースのカーテンがに揺れている。
止まっていた計は、再び確かな音をててを刻み始めていた。
失われたを取り戻すことはできない。しかし、これから紡がれる未来は、あの暗を乗り越えたからこそ、誰よりもく、温かく、り輝いている。
はしっかりとをねい、どこまでも広がる青空ので、しい歩を踏みしていた。