"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第9話
記憶の扉とピンクの部
それからの午。
鎌倉ののに、台のワゴンが静かにした。
ドアがき、児童福祉司に付き添われたくるみがりてきた。淡いブルーのデニムパンツにいブラウス。ぶりに踏みしめる、まれ故郷のだった。
玄関先で待っていたえみと雅弘が、温かい笑顔で迎え入れる。
「おかえり、くるみ」
「……ただいま、ございます」
ぎこちない会釈とともに、敷居を跨ぐ。
のに漂う匂い——古い材のりと、今朝えみが丹に淹れたコーヒーの残り。くるみは玄関ホールにち尽くし、きょろきょろと周囲を見回した。
「庭の……」くるみがさく呟いた。「あそこに、昔、赤いブランコがありませんでしたか?」
えみの胸が激しく鳴った。
「そうよ! あなたのおじいちゃんが作ってくれたブランコよ! で傷んでしちゃったけど、柱の具はまだ残っているわ」
「やっぱり……じゃなかったんだ……」
女の表に、微かな堵のが差した。
「くるみ、あなたの部へってみる?」
雅弘の問いかけに、くるみはさく頷いた。
階段をがる音がつ、リズミカルに響く。歳の頃、段登るごとに「よいしょ、よいしょ」と言っていた幼い女の面をねわせながら、えみは先を歩いた。
階の廊の奥、いドア。
えみがノブにをかけ、ゆっくりと押しいた。
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の眩しい太陽のが、け放たれた窓から差し込み、部全体を黄に包み込んでいた。
ピンクの壁。ハローキティの製ベッド。本棚に並ぶ絵本。そして、今朝えみが綺麗に洗い直し、太陽ので乾かしたばかりのさなたちが、清らかな鹸のりを漂わせていた。
くるみは部の央へと歩みをめた。
埃つないベッドのに腰掛け、ハローキティの掛け布団をそっと撫でる。
「……すごく、綺麗」
くるみの瞳が揺れていた。
「も誰もいなかった部なのに……どうして、こんなに綺麗なんですか?」
えみはベッドの脇に跪き、娘の震えるを包み込むように握りしめた。
「毎ね、になると、お母さん、この部の窓をけて空気を入れ替えていたの。を洗って、シーツを干して、おもちゃの埃を払って……いつかあなたが帰ってきたとき、すぐに眠れるようにって」
くるみは息を呑んだ。
「毎……、ずっと……?」
「そうよ。雅弘さんには『もう諦めてを向くべきだ』って何度も言われたわ。でもね、お母さんにはどうしても諦められなかった。あなたがどこかできているって、信じることだけが、お母さんの命を繋ぎ止めていたの」
くるみの線が、壁の写真へと向けられた。
歳までの自分が、えみと雅弘に抱かれて、からの笑顔を咲かせている無数のスナップ写真。
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そして、チェストのに置かれた台のデジタルカメラ。
あの、失踪のの朝に撮られた、ベッドので抱きう母と娘の写真が、さな画面ので今も鮮やかに輝いていた。
「私……されていたんですね」
くるみの声が震え、堰を切ったように粒の涙が頬を伝い落ちた。
「事故でんだんじゃない……私を捨てたんじゃない……ずっと、探してくれていたんだ……!」
「当たりじゃない! 捨てるわけがないでしょう!」
えみはたまらず、女の体を両腕で力いっぱい抱きしめた。
くるみはもう、を引くことはしなかった。歳の体をさく丸め、母親の胸に顔を埋めて、子供のように声をげて泣きじゃくった。
「お母さん……! ごめんなさい、お母さん……!」
「謝らなくていいのよ、くるみ……! きていてくれてありがとう……帰ってきてくれて、本当にありがとう……!」
雅弘もまた、を包み込むようにい腕を回し、声を殺して涙を流した。
の断絶を埋めるように、の温もりが、さな子供部ので溶けっていった。