"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第8話
鑑定と越えられない壁
翌の夕刻。田警察署の特別会議に、張り詰めた沈黙が流れていた。
机を挟んで、えみと雅弘が寄り添うように座っている。徹夜の疲労と精神な消耗での顔は気だったが、その瞳には縋るようなが宿っていた。
扉がき、神奈川県警の野警部補と、静岡県警の科捜研担当官が入してきた。には、厳に封印された青いファイルが握られている。
「……結果がました」
野が静かに告げ、類をいた。
「DNA型鑑定の結果です。雅弘さん、えみさんのDNAサンプルと、保護された女のDNAサンプルを詳細に照いたしました。その結果——」
野は顔をげ、夫婦の目を真っ直ぐに見つめた。
「親子関係の確率は、99.9999パーセント。……違いありません。あの子は、に失踪した、おの娘、くるみちゃんです」
「ああ……っ!」
えみは両で顔を覆い、声をげて泣き崩れた。雅弘もまた、妻の肩をく抱きしめながら、粒の涙を机のに落とした。
。千百という果てしない暗の果てに、公な国の関によって、娘のと血の繋がりが完全に証された瞬だった。
しかし、法な証が、失われた歳のすべてを埋め戻してくれるわけではなかった。
分、児童相談所のケースワーカーに付き添われ、くるみが会議へと入ってきた。
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きすぎるグレーのパーカーにを包み、俯いたままパイプ子に腰掛ける。その目は赤く腫れがり、線は頑なに自分の爪先に固定されていた。
「くるみ……」
えみが子からちがり、わず歩を踏みそうとした。
しかし、くるみはビクッと肩をねさせ、自らの体を抱きしめるようにして子をろへ引いた。
「……ごめんなさい」
消え入りそうな、掠れた声だった。
「私……写真を見て、あの部のことも、お母さんの声も……いしました。でも……」
くるみは涙を浮かべた瞳をゆっくりとげ、えみと雅弘を見つめた。
「でも、私ののには、あのお父さんと過ごしたの記憶しかないんです。学の運会に来てくれたのも、をしたときに夜通し病してくれたのも、ウェイクボードを教えてくれたのも……全部、あのなんです。犯罪者だって分かっても、誘拐されたんだって分かっても……急に、今から『あなたたちが本当の親です』って言われても……どうしたらいいのか、分からないの……!」
女の痛切な叫びが、会議の壁にく反響した。
被害者であるはずの女が、加害者によって与えられた歪な「常」に引き裂かれ、自らのアイデンティティを完全に喪失して苦しんでいる。
雅弘は唇を噛み締め、ちがろうとするえみの肩をそっと押さえた。
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そして、娘と同じ目線になるようにに片膝をつき、穏やかな声で語りかけた。
「くるみ。無理にいそうとしなくていい。今すぐ俺たちを両親だと認めなくてもいいんだ」
雅弘の声は震えていたが、そこにはい覚悟が宿っていた。
「、おを守ってやれなかったのは俺たちの責任だ。おがどんなに育ち、何を切にしてきたか、それを全部否定するつもりはない。……ただ、これだけは信じてほしい。俺たちはおをたりとも忘れたことはなかった。きていてくれて、こうして会えただけで、俺たちは奇跡だとっているんだ」
くるみは息を呑み、雅弘の顔を見つめた。
えみもまた、溢れる涙を拭い、優しく微笑みかけた。
「焦らなくていいのよ、くるみ。何かかってもいい。あなたのペースで、ゆっくり私たちのことをっていってくれれば、それで分だから」
女の頑なだった肩の力が、ほんのわずかに抜けた。
その夜、くるみは児童相談所の保護施設に宿泊することが決まった。法な続きと、のケアを慎にめるための措置だった。
警察署の駐をた夜空には、満のが広がっていた。
娘を取り戻した。しかし、真の「族」を取り戻すための、くて険しいのりは、今まさに始まったばかりだった。