"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第6話
の対峙と偽りの父親
「待って! お願い、待って!!」
夕暮れの静かな宅を切り裂いたえみの絶叫に、武田竜の体が目に見えて直した。
にしていたのキーホルダーがカチャリと乾いた音をてる。ゆっくりと振り返った男の浅黒い顔から、潮に焼けた赤みが急速に引き、気の蒼さが広がっていく。の歳が瞬にして巻き戻され、かつて隣の庭の垣越しに笑いっていた男の表に、剥きしの恐怖と揺が張り付いていた。
「え……み、さん……?」
掠れた声が、男の喉から漏れた。
「お父さん? 誰、この……?」
審そうに眉をひそめたのは、の助席のドアノブにをかけていた女だった。濡れた髪をタオルで拭きながら、母親であるはずのえみを見つめるその瞳には、親のなど微もなく、ただ見らぬ狂に遭遇したかのような警戒とだけが漂っていた。
「くるみ……! くるみでしょう!? 私よ、お母さんよ!!」
えみは泣き叫びながら、もつれるで坂を駆けがった。サンダルが脱げ、アスファルトのが素の裏を焼いたが、痛みなど何もじなかった。あと数メートル。を伸ばせば、にまで見続けたが子の温もりに届く。
だが、武田の反応はだった。
「乗れ、くるみ! くに入れ!!」
武田は女の細い肩を力任せに押し込み、助席のドアを乱暴に閉め切ると、集ドアロックをガチャリと作させた。
広告
「お父さん、何なの!? けてよ!」
窓を叩く女の叫びを無し、武田は運転席へと回り込もうとした。その瞬、背から猛烈なブレーキ音が響き渡り、台のセダンが斜めに歩へ乗りげるようにしてまった。
「やめろ、武田ッ!!」
からびしてきたのは、鎌倉から妻を追って速をばしてきた雅弘だった。血相を変えた雅弘が、息を切らしながら武田の胸ぐらにびかかった。
「お……! まさか本当に、おがくるみを……!」
「放せ! 何を言ってるんだ、おら! 警察を呼ぶぞ!」
武田は激しく暴れ、雅弘の腕を振り解こうとした。の男がアスファルトので組みい、激しい罵声を浴びせう。
その、くから幾にもなるけたたましいサイレンの音が、に乗って急速にづいてきた。
雅弘が追跡の最に通報した〇番、そしてえみが鎌倉警察署に残していった写真と掛かりから、異様な事態を察した静岡県警と神奈川県警のパトカーが、緊急で現の坂を駆けがってきたのだ。
ウー、ウー、ウーッ!
赤灯を激しく滅させた台のパトカーが、逃げを塞ぐようにして急した。
「そこまでだ! 全員、くな!」
助席からびしてきた制警官たちが、組みう男たちを取り囲む。
サイレンの音を聞いた瞬、武田竜の顔から最の抵抗のが消えった。
広告
男は自ら脱力するように両膝を面につき、アスファルトの面を見つめて肩を落とした。
「……終わりだ。全部、終わったんだ……」
震える声で呟く武田に、警察官が錠をかける。
その騒乱の傍らで、えみはパトカーの警官に制止されながらも、ワンボックスカーの助席の窓ガラスに両を押し当てていた。
「くるみ……! くるみなのね……!」
しかし、内から解錠されてへてきた女は、えみの震えるを激しく払いのけた。
「触らないで!!」
鋭い拒絶の叫びが、夕暮れの空に響き渡った。
女の全は恐怖で刻みに震えていた。彼女は取り押さえられた武田の方へすがりつこうとし、警察官に抱きとめられながら涙を流した。
「お父さん! お父さんを放して! このたち誰なの!? 何でこんなことするの!?」
「くるみ、聞いて……私たちが、本当のお父さんとお母さんなのよ……!」
えみが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら訴えかけると、女は信じられないものを見るような侮蔑と恐怖の目を向け、きっぱりと言い放った。
「嘘よ! 私の本当の両親は、私が赤ちゃんの頃に交通事故でんだってお父さんから聞いたわ! 私はずっとお父さんとで暮らしてきたの! あなたたちなんか、私の親じゃない! らないよ!!」
、娘の無事を祈り続けてきた母親の臓に、娘自のから放たれた言葉が、最も酷な刃となって突き刺さった。