"13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた" 第5話
潮の追跡と交錯する線
午分。
相模湾をに臨む料をし、えみのは伊豆半島の岸線へと滑り込んだ。真のギラギラとした太陽がに傾き始め、面を眩しいオレンジの鱗のように乱反射させている。
鎌倉をてから。途、雅弘から何度も着信があったが、えみはすべて無してドライブモードのままり続けた。
掛かりは、あの写真枚だけだった。
伊豆・浜のメインビーチ沿いには、数軒のマリンスポーツやレンタルショップが軒を連ねている。えみはをコインパーキングにめ、額の汗を拭いながら、写真を片に軒ずつショップを回り始めた。
「すみません、この青いウェイクボード……このカモメのマークに見覚えはありませんか?」
炎、砂混じりのが吹き付ける、軒、軒と断られ続けた。
「うちの板じゃないね」「カモメのマークなんてどこにでもあるよ」
たい返答にが折れそうになりながらも、岸の端にある、造の古びたプロショップのカウンターに写真を差ししたとき、浅黒く焼けした主の男がを止めた。
「ん? これ、うちのオリジナルボードだよ。今限定で本だけ作ったやつだ」
えみの臓がねがった。
「本当ですか!? この写真の方……武田竜さんというお客様をごですか!?」
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「武田さん? ああ、ってるよ。常連さんだ。今も朝から娘さんと来てて、さっき引き揚げたところだよ」
娘。主のから自然にたその単語に、えみは目眩を覚えた。
「その……娘さんのお名は、ごですか?」
「くるみちゃんだろ? ウェイクボードがめちゃくちゃくてさ、先のローカル会でもジュニア部で入賞したんだよ」
くるみ。
ので、巨な鐘が乱打された。
武田竜は、あの女を、偽名を使うことすらなく『くるみ』と呼んで育てていたのだ。
「あの……私、武田さんの親戚なんです! 京からサプライズで訪ねてきたんですが、連絡先を失くしてしまって……ご自宅の所を教えていただけませんか!?」
必の形相で詰め寄るえみの気迫に気圧されたのか、主は瞬躊躇したものの、メモ用にボールペンでりきをして渡してくれた。
「ここからで分くらいの宅だよ。別荘を抜けた先の、坂のの軒だ」
メモを握りしめ、えみは礼もそこそこにへとった。
教えられた所は、岸沿いの喧騒かられた、静かな台の宅だった。垣に囲まれたい平建ての宅。庭には入れされた芝が広がり、駐には品川ナンバーのワンボックスカーがまっていた。
えみはしれたの肩にを止め、息を殺してそのを見つめた。
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夕暮れの蝉の声が、障りなほどきく響いている。
午分。
ワンボックスカーの助席のドアがき、きなスポーツバッグを肩にかけた女がりてきた。
息を呑む。画面越しではない、の姿。
濡れた髪を無造作にタオルで拭きながら、軽くステップを踏むようにして玄関へと歩いていく。歳の頃、りをするときに必ず肩をしげる癖があった。その独特のの揺れが、歳の女の体のきのに、まぎれもなく息づいていた。
続いて、運転席から武田竜がりてきた。かつて隣の庭でバーベキューグリルを囲んでいた男。し髪が増え、恰幅が良くなっていたが、紛れもなくあの武田だった。
「ああ……神様……」
えみの両目から、い涙がとめどなく溢れした。
違いなく、あの子だ。私の娘だ。きていた。、すぐ隣の県で、の娘としてきていたのだ。
そのとき、玄関の鍵をけようとした武田が、何かをいしたように女に声をかけ、で再びへと戻ろうと踵を返した。
——どこかへってしまう!
パニックがえみの理性を完全に消しった。
止める夫も、制止する警察も、ここにはいない。
えみはのドアを勢いよく蹴りけ、坂を駆けがった。
「待って! お願い、待って!!」
静まり返った宅に、えみの痛な絶叫が霊した。
振り返った武田竜の目が、突如として現れたえみの姿を捉えた瞬——男の顔から、すべての血の気が引き、瞳孔が極限まで見かれた。
のを超えて、奪った者と奪われた者の線が、の夕暮れのので激突した。