"雪の空港で消えた四人と第七格納庫" 第11話
黒田信司という男
黒田信司のを調べれば調べるほど、から見える姿と内側の異常さの落差が浮かびがった。職では無で真面目、欠勤はほとんどなく、難しい修理を任せれば黙ってやり遂げる備士だった。司の古い評価表には「協調性に欠けるが技術力はい」とだけ記されていた。
元同僚たちのくも、黒田をく覚えてはいなかった。
「静かなだった」
「昼休みもだった」
「女性に話しかけているところはほとんど見たことがない」
しかし部には、別の記憶があった。
黒田は空港内で働く女性の勤務予定を妙によくっていた。
誰がどの便に乗るか。
誰が遅番か。
誰が通勤か。
当は備必な報だとわれ、問題されなかったという。
さらに黒田は写真撮を趣にしていた。
空港の景、、備景。
そのためカメラを持って歩いていても誰も審にわなかった。
だがから見つかった写真には、らかに被写体へ無断で撮したものが量にあった。
順子が売でみ物を買う姿。
理が従業員堂で同僚と話す姿。
奈がバスへ向かう姿。
さゆりがで駐を歩く姿。
事件の数かから、黒田はの常を記録していた。
「これは準備です」
神崎は写真を代順に並べた。
「最初はい。だんだん距がくなる。
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そして最のかは帰宅経まで追っている」
彼はに接触せず、観察だけをねていた。
そのため被害者たちも、確な脅迫として警察へ届けるほどの危険をじなかった。
さゆりだけが妹へ「同じ男をよく見る」と話していた。
野はそのことが悔しかった。
今ならストーカー為として扱われる能性がい。
しかし1989当は、「らない男が何度もくにいる」という訴えだけできな捜査につながる代ではなかった。
さらに元妻・千恵子の証言から、黒田が庭内でも支配なを繰り返していたことがらかになった。
物を隠す。
言ったことを否定する。
相の記憶が違っているとわせる。
暴力そのものより、相が自分自を信じられなくなる状態を作ることを好んでいた。
「のを見るのが好きだったんだといます」
千恵子はそう言った。
黒田の記にも似た記述が残っていた。
恐怖そのものではなく、相が自分では何も決められなくなる瞬を「美しい」と表現している。
神崎はそれを読んで首を振った。
「本は芸術と呼んでいますが、実際には支配欲です。自分がのももも決定できるという覚を、特別なものだとい込んだ」
だからを円形に並べた。
互いに見えるようにした。
のが残りへ伝わる様子まで、黒田にとっては計画の部だった。
だがテープの最には、その自己神話が度だけ崩れる瞬が残されていた。
がかなくなった。
黒田はい沈黙の末、かすれた声でこう録音していた。
像していたような満がない。
何もかけて望んだ瞬なのに、残ったのは何もない。
その「空虚さ」こそが、黒田を35へ縛りつける始まりだった。