"義母に突き落とされたので、離婚します" 第4話
を連れた夫と届かなかった病
翌朝の午。総病院の産婦科病棟の廊に、甲いハイヒールの音と、釣りいにはしゃぐ男女の話し声が響き渡った。
「ねえ孝志、本当に今で全部片付くの? 婚届さえもらえば、来にはあのマンションで緒に暮らせるんでしょ?」
「当たりだろ。あいつが自分で『婚する』って言いしたんだ。追いすが省けて最だよ。せいぜい慰謝料なしでサインさせて、実に放りしてやるさ」
級ブランドのバッグを揺らす井レナの腰にを回し、孝志は得げにを鳴らした。妻の見いに来ているというのに、のには束も果物もなく、まるでドライブデートの途にち寄ったかのような軽な取りだった。
病棟のナースステーションので、孝志はカウンターを軽く叩いた。
「ですけど。妻のさつきの部はどこですか」
応対にた護師のは、孝志と、その隣で退屈そうに髪をいじるレナの姿を瞥した。医療の現にを置いてきたの胸の奥で、激しいりが渦巻いた。妻が命の危を乗り越えたばかりだというのに、昼堂々、を連れて病棟へ乗り込んでくる男。
は表を切崩さず、極めて事務な声音で答えた。
「様ですね。申し訳ありませんが、奥様は現、切の面会をお断りしております」
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「はあ? 面会拒否?」孝志の眉がそうにねがった。「夫の俺が会いに来てやってるんだぞ? 何を調子に乗ってんだあいつは」
レナが隣でふっと吹きした。「何それ、奥さん、私が緒に来たから拗ねて閉じこもってるんじゃない? 子供みたいでみっともないわね」
はレナの言葉を完全に無し、のポケットから通のい封筒を取りしてカウンターに置いた。
「奥様から、ご主にこれをお渡しするように頼まれております」
孝志は舌打ちをしながら封筒を乱暴に破った。からてきたのは、緑の枠線が印刷された用——さつきの自による署名と実印が押された婚届だった。
「ハッ! 本当に用してやがった」
孝志は嘲笑を浮かべ、用をつ折りにした。
「ご主、にも入っております」
が促すと、孝志は封筒のからさな便箋を引きした。そこには、凛とした細い文字で、たっただけが記されていた。
『あなたが守らなかったものを、私は守ります。』
「……なんだこれ? ポエムかよ。最まで湿気た女だな」
孝志はで笑い、をポケットへ適当にねじ込んだ。
「まあいいや、目は果たした。くぞ、レナ」
はさつきの怪の容態を度も尋ねることなく、なぜ階段から転落したのかを配することすらなく、背を向けてにっていった。
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その直、診察の奥から主治医の赤医師が歩みてきた。
「……かれましたか」
「ええ。驚くほどご自分の類だけを受け取って、度も奥様の容体を気にすることなくお帰りになりました」
の声には、抑えきれない軽蔑が滲んでいた。赤は元のカルテを見つめ、静かに息を吐いた。
「あの男は、まだ何も気づいていませんね。自分がすでに、として、そして父親として完全に切り捨てられたということに」
さつきは昨夜のうちに、個のプライバシーと全を最優先にする特別管理病棟へと部を移されていた。夫がを連れて乗り込んでくることなど、さつきには完全に予測できていたのだ。
自分の尊厳と、お腹ののしい命を確実に守るために、さつきは夫のから完全に姿を消した。
孝志は自分が妻を捨てたつもりでいた。しかし現実は、完全にその逆だった。